2019さが総文
(2019年7月取材)
■部員数 24人(うち1年生12人・2年生7人・3年生5人)
■答えてくれた人 田野岡大季くん(1年)
アフリカツメガエルがおびやかす鳥ノ巣半島の自然環境
鳥ノ巣半島は吉野熊野国立公園に含まれています。里山など貴重な自然が残され、様々な絶滅危惧種が確認されています。2007年に鳥ノ巣半島内の2か所の溜池で、外来種のアフリカツメガエル(Xenopuslaevis)が発見されました。私たち田辺高校の調査で、アフリカツメガエルが繁殖することによって水生昆虫などに大きな影響を与えていることがわかりました。
そこで私たちは、鳥ノ巣半島の環境を保全するためにアフリカツメガエルを駆除するべく、研究を行いました。駆除のために三つの方法を考案しました。
一つ目は、罠による捕獲です。
アナゴ用の罠を使用し、鳥のレバーを餌にして10か所のため池で毎月1回、アフリカツメガエルを捕獲しています。
二つ目はネット作戦です。
溜池の水を抜き、ネットを張ってアフリカツメガエルを窒息死させることを目指します。これは2017年12月に2か所、2018年9月と10月に1か所ずつ、計4か所で実施しました。
三つめは金網作戦です。
溜池の水を抜き、ネットを張った後に溜池の周囲を網目1cmの金網フェンスで囲います。これは2018年8月に2か所、10月に1か所の計3か所で実施しました。
以上の手法の結果から考察を行いました。
1. 罠による捕獲のみの溜池
横軸は捕獲時期、縦軸は捕獲数を示しています。
罠による捕獲のみのため池では、断続的にアフリカツメガエルが捕獲されており、根絶できていないことがわかります。
2. ネット作戦を行った溜池
ネット作戦を行った溜池のうち、2か所では実施以降アフリカツメガエルが捕獲されておらず、他の2か所では捕獲されています。このことから、ネット作戦は根絶に一定の効果は見られるものの、完璧ではないことがわかります。
3. 金網作戦を行った溜池
金網作戦を行った溜池では、実施以降1か所の溜池ではアフリカツメガエルが捕獲されませんでしたが、他の2か所では捕獲されています。
以上の結果から、水抜きを行ったネット作戦と金網作戦のいずれも実施後にアフリカツメガエルが捕獲される場合とされない場合があることがわかりました。また、金網作戦の方が実施後に見つかったアフリカツメガエルの数が多いことから、金網の効果は低いと考えられます。
また、罠による捕獲のみのため池でも1年近くアフリカツメガエルが捕獲されなかった時期があることから、現時点で水抜き以降に捕獲されていない溜池についても、まだ根絶できているかはわかりません。
ただしどの溜池でも、水抜き直後は捕獲数が激減することから、駆除効果が高いと言えます。
今回は、水抜きの際に完全に駆除しきれなかった可能性が高いです。ネットに穴が開いていた、あるいはネットを固定するペグの刺さりが悪く、隙間ができていたことなどが原因として考えられます。今後は、ネットの強度を上げて二重に敷き、ペグの間隔を狭めるとともに、ペグをより長くして深く刺すことで、以上の問題に対処します。
今後もアフリカツメガエルの駆除活動を続け、和歌山県全域に分布が拡大する前に、半島内で完全駆除ができるようにしたいと思います。
■研究を始めた理由・経緯は?
国立公園内の鳥ノ巣半島で外来種のアフリカツメガエルが繁殖し、在来生物に大きな影響を与えていたため、在来生物を保全することを目的として活動しています。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
2014年からこの活動を始め、今年で5年目です。
■今回の研究で苦労したことは?
現地調査です。水抜きした池でのカエルとの格闘が一番苦労しました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
グラフを大きく見やすくしました。また、実物のアフリカツメガエルの標本を持って行き、インパクトを与えて注目を引きました。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究
・「紀伊民報」 (2007年7月5日)
・「和歌山県で野生化しているアフリカツメガエルの影響」和歌山県立田辺高等学校生物部(第41回全国高等学校総合文化祭,2017)
・「鳥の巣半島の豊かな生態系を取り戻す」和歌山県立田辺高等学校生物部(第42回全国高等学校総合文化祭,2018)
■今回の研究は今後も続けていきますか?
「鳥ノ巣半島内での完全駆除」を目標に、これからも頑張ります。
■ふだんの活動では何をしていますか?
アフリカツメガエルをいかに効率よく駆除できるかを考え、実際にその方法を試しています。また、学校周辺の生き物も調査しています
■総文祭に参加して
同じ高校生と交流することができて、今後の研究に活かせる内容を学ぶことができたのがとてもよかったです。