2019さが総文

オジギソウが葉を閉じなくなる?! 葉の開閉のメカニズムに迫る

【ポスター/生物】広島県立広島国泰寺高校 科学部生物班

(2019年7月取材)

左から 湯川綾さん、鎌田彩音さん、藤井優子さん、首藤大輝くん、木上晴登くん
左から 湯川綾さん、鎌田彩音さん、藤井優子さん、首藤大輝くん、木上晴登くん

■部員数 43人(うち1年生17人・2年生16人・3年生10人)

■答えてくれた人 鎌田彩音さん(2年生)

 

オジギソウの葉は本当に閉じなくなるのか

オジギソウの葉は刺激の大きさを判別している?

 

オジギソウは、葉に指で触れると葉が閉じるという特徴があります。私たちはこの現象を不思議に思い、先行研究を調べたところ、M.Gagliano(2014)はオジギソウに何度も水滴を垂らすと葉が閉じなくなると報告していました。オジギソウには記憶がないはずなのに、なぜ葉が閉じなくなるのかと疑問を持ち、さらに文献などを調べましたが、他の記載を見つけることができませんでした。

 

そこで、本当に葉は閉じなくなるのか、またなぜ閉じなくなるのかということを明らかにするため、実験を行いました。

 

はじめに行った実験1では、オジギソウの葉に何度も水滴を垂らすと葉が閉じなくなるという仮説を検証しました。

 

図のように水滴落下装置を作成し、同じ粒の大きさ・同じ高さ・一定のスピードで水滴を垂らし続けました。

 

 

その結果、実験を行った6株すべてのオジギソウについて、3800滴あたりを超えると葉が閉じなくなるという現象が確認されました。

 

しかし、実験後に葉が綴じなくなったオジギソウに指で刺激を与えると、活動電位が発生して葉が閉じました。このことから、刺激の強さや種類によって、葉が閉じる仕組みが異なると考えられます。

 

 

次に、私たちは、外で栽培しているオジギソウが、雨の中で葉を開き続けているという現象を確認しました。そこで、雨粒の大きさは常に一定でないと考え、実験1の水滴の大きさを変えるとどのような変化が生じるのか調べるために、実験2を行いました。

 

ここでは、オジギソウの葉が水滴により受ける力が大きいほど、閉じなくなるまでの水滴数が少ないと仮説を立て、実験1の水滴落下装置の注射針部分を他のものに変え、葉が閉じなくなるまでの水滴数を測定しました。

 

 

その結果、葉が受ける力が大きくなるにつれて、葉が閉じなくなるまでの水滴数は減少することがわかりました。

 

このことから、オジギソウの葉は受ける刺激の大きさの違いを判別していると考えられます。

そして、オジギソウの葉が閉じる刺激の強さには閾値があると考えました。

 

 

葉の開閉には活動電位の発生が関係する

 

実験3では、オジギソウに電位測定装置を設置し、水滴を垂らした際の電位差を測定しました。水滴の質量を変え、活動電位の発生を確認しました。

 

 

結果が下のグラフです。

この結果から、小さな刺激では活動電位が発生せず、ある値以上では活動電位が発生し、刺激が大きくなるにつれて活動電位の大きさも大きくなりました。

 

つまり、実験2で閾値以上の刺激を与えているにもかかわらず葉が閉じなくなったのは、閾値が大きくなったためだと考えられます。

 

 

オジギソウの葉が閉じなくなる現象について、私たちはその原因に3つの仮説を立てていました。

 

 1. 受容器官が刺激を受け取らなくなる

 2. その際に活動電位が発生しなくなる

 3. 膨圧運動が起こらなくなる

というものです。

 

そして、実験1で葉が閉じなくなった後に指で触れると葉が閉じたことから、受容器官と膨圧運動については問題がないと考えられます。つまり、葉が閉じなくなるのは活動電位が発生しなくなるからであると考えました。

 

実験4では、先ほどの電位測定装置で葉が閉じる時と閉じない時の電位差を測定しました。

 

 

その結果、葉が閉じる時は活動電位が発生し、閉じない時は発生しませんでした。

 

このことから、オジギソウの葉が閉じなくなる現象と活動電位の発生には相関関係があると考えられます。

 

しかし、実験3を行った際に活動電位が発生しても葉が閉じないという現象が見られました。そのため、葉が閉じなくなるメカニズムにおいてまだ確認していない段階があると考えています。今後はそのことについても研究していきたいと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

そもそも私たちがオジギソウに興味を持ったのは、オジギソウの葉が閉じる動きに疑問を持ったからです。私たちは、オジギソウについて調べる際にM.Gaglianoの論文を読みました。その論文では、オジギソウに水滴を垂らし続けると葉が閉じなくなる現象が報告されていました。なぜその現象が起こるのかに疑問を持ち、他の文献等を調べましたが、調べた範囲ではそのような記載を見つけることができませんでした。そこでオジギソウの葉は本当に閉じなくなるのか、またなぜ閉じなくなるのかを明らかにすることにしました。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1日あたり2時間で17か月です。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

冬にオジギソウが枯れてしまうことです。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

水滴落下装置(一定のスピードで落下)や電位差測定装置などの実験装置を自作したこと。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

・「Experience teaches plants to learn faster and forget slower in environments where it matters」M. Gagliano 、M.Renton、M.Depczynski、S.Mancuso、Springer(Oecologia,63 72,2014.)

・「動く植物―オジギソウとハエジゴクから」阿部 武 (歴春ふくしま文庫)

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

オジギソウの葉が閉じなくなる原因についてさらに研究を進めていきたいです

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

科学の祭典、ひろしま湾再生プロジェクトなどに参加しています。

 

■総文祭に参加して

 

全国から集まったいろいろな研究を見ることができ、多くのことを学ぶことができました。全国規模で発表するのは初めてだったので、貴重な体験ができたと思います。

 

⇒他の高校の研究もみてみよう

 2019さが総文の全体レポートのページへ

 

河合塾
キミのミライ発見
わくわくキャッチ!