2019さが総文

化石燃料の代替となる藻類を効率的に培養し、エネルギー問題解決への寄与を目指す!

【ポスター発表/化学】栃木県立鹿沼高校 化学部

(2019年7月取材)

左から 松本淳希くん(3年)、大野航平くん(3年)
左から 松本淳希くん(3年)、大野航平くん(3年)

■部員数 8人(うち2年生5人・3年生3人)

■答えてくれた人 松本淳希くん(3年)、大野航平くん(3年)

 

産油藻類の増殖に関する研究

石油と同じ炭化水素を生産する藻類

 

化石燃料は有限であるため、それに代わる産油方法の確立が急がれています。私たちはオーランチオキトリウムとボトリオコッカスという2種の藻類に着目しました。これらは炭化水素を合成することから、産油原料として注目されています。私たちは、これらの藻類を使って家庭排水の浄化と石油様物質の生産を行うことを最終的な目標として、今回は藻類の培養速度が条件によってどのように変化するか研究しました。

 

オーランチオキトリウム(Aurantiochytrium)は海水生の従属栄養藻類(光合成を行わない藻類)です。細胞径は3~5なのμmで、細胞内にスクアレンという炭化水素を蓄積させます。

 

 

ボトリオコッカス(Botryococcus braunii)は淡水生の独立栄養生物です。細胞径は10~20μmで、こちらはボトリオコッセンという炭化水素を生成します。スクアランとボトリオコッセンは、ともに石油の代替エネルギーとなることが期待されています。

 

 

寒天培地で効率よく培養する条件は

 

私たちは、これらを寒天培地で培養する実験を行いました。寒天培地の組成は、純水100mLに対し、グルコース2.0g、トリプトン1.0g、粉末酵母1.0g、寒天を含みます。ここに人工海水や好適環境水の素を加えて比較しました。好適環境水とは、淡水生と海水生の生物が同時に生息できる濃度の水溶液です。

 

 

寒天培地を滅菌したのち、海水生のオーランチオキトリウムを希釈して植え付け、25℃に設定したインキュベーターの中で培養しました。その際、人工海水濃度・好適環境水濃度を変化させることで、6日間にオーランチオキトリウムの形成するコロニーの長径がどのように変化するか調べました。

 

 

結果が下記のグラフです。

 

人工海水を80%含む培地と好適環境水を90%含む培地が、最もコロニーを成長させました。ゆえに、オーランチオキトリウムの培養では、好適環境水を用いれば塩分調節しなくても淡水生の藻類と同じ培地で培養できる可能性が示唆されました。

 

 

ただし、今回の実験では、私たちの高校に無菌箱がないため、滅菌作業に膨大な時間がかかってしまいました。滅菌の手順は下図のとおりです。今後は、より効率的な滅菌方法を模索しつつ、炭化水素の収率なども計測していきたいと考えます。

 

 

海水生と淡水生の藻類の同時培養は可能か

 

さらに私たちは、ボトリオコッカスとオーランチオキトリウムの同時培養を目指し、下図のような装置を作製しました。

 

オーランチオキトリウムは海水生の従属栄養藻類なので、有機物の合成に伴い二酸化炭素を放出します。これをボトリオコッカスの光合成に利用できるように連結させました。

 

 

こちらは最近始めたばかりの研究で十分なデータが取れていないため、今後はデータを増やしながら効率化を進めていきます。最終的には家庭排水でもこれらの藻類を培養できるような仕組みを目指し、研究を進めていきたいと思います。

 

■研究を始めた理由・経緯は?

 

化学部の先輩が、生物部との合同で始めた研究を引き継ぎました。詳しくはわかりませんが、筑波大学が行っている研究や、近年問題となっている石油の枯渇問題などの助けになりたいと思う気持ちと、普段の活動や授業よりも一段階難しい活動をしてみたいという気持ちから始まったと思います。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

 

1日5時間を週に2、3回、2016年~2018年9月で行いました。

 

■今回の研究で苦労したことは?

 

滅菌があまりうまくいかず、正確なデータを得るのに時間がかかってしまったことです。

 

■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

 

培養を行う上で、人工海水だけでなく好適環境水といった、海水・淡水の生物がどちらでも生息可能なものを用い、2種類の藻類の共存を図ったこと。

 

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究

 

筑波大学のバイオマスエネルギーの研究

筑波大学渡邉信研究室

http://www.abes.tsukubai.ac.jo/clabes/watanabe

 

■今回の研究は今後も続けていきますか?

 

公的な研究機関がこの研究を断念してしまい、続けることが困難なのですが、もしできるなら、培養温度の変更や実地試験など、山積みの課題に取り組んでいきたいと考えています。

 

■ふだんの活動では何をしていますか?

 

部員の気になったことをもとに研究、実験を行い、それを用いて年に一度の文化祭でサイエンスショーを行います。

 

■総文祭に参加して

 

皆さんの研究はよく調べられており、とてもまとまっていて、そこから学ぶことがたくさんありました。科学的探求心が刺激され、今後の研究のモチベーションにもつながりました。この度は、このような催しにお招きいただけたことに心より感謝を申し上げます。

 

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