第12回全日本高校模擬国連大会

所属できるグループがなくて会議序盤から孤立という危機的状況を乗り越えて、WPの提出国に

聖心女子学院高等科Bチーム[東京都] 担当国: イラン

小林りこさん(1年)

 [海外旅行・滞在の経験] 旅行や短期留学で何回か行ったことがある

山内梨々花さん(1年)

 [海外旅行・滞在の経験] 旅行や短期留学で何回か行ったことがある 

(2018年11月取材)

 

担当国を希望した理由を教えてください。

武器移転規制に消極的な立場を明確に示している国で、比較的会議行動を練りやすいのではないかという結論に至ったため、イランを希望しました。武器移転に関して議論を展開する上で重要となる武器貿易条約に未批准であり、武器移転規制に関連する決議においても反対票を投じ続けている数少ない国の一つであることに注目し、プレゼンスを示せると期待していました。

 

担当国は「武器移転」について国際的にどのような立場を取っていますか。また、論点1・2についてのボトムライン(これ以上は譲れない点)を教えてください。 

イランは武器移転規制には消極的で、武器移転推進の立場をとっており、周辺国や武器輸出に力を入れている先進国などを対象に武器貿易を行っています。国家の他にも、ヒズボラというシーア派の非国家主体に対して資金や武器を含む物資支援を継続しています。

 

論点1は、透明性確保に関して統一的な見解を国連加盟国全体で共有することと、通常兵器移転に関して報告等の内容は各国裁量に委ねることをボトムラインとして掲げました。イランにとっては、現状維持が最も望ましい状態なので、現在公開している範囲以上に自国の情報を共有することは避けるようにしました。

 

論点2は、イランが、現在も、武器の輸出を継続している組織でありながら国際的に「テロ組織」だと認められているヒズボラ等非国家組織への武器移転を規制されないことをボトムラインに設定しました。

 

準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

苦労したこととしては、武器移転に関する情報は国家機密であるが故に、公開されている情報が非常に少なく、リサーチが行き詰まってしまうことが多々あったことが挙げられます。その際には、日本語の資料のみならず、英語の資料にも積極的に目を通すようにしたり、手元にある情報から「もし自分たちがイランならどのように振る舞うか」を想像して会議行動を考えたりと、あらゆる手法でアプローチしました。

 

工夫したことは、限られた時間の中で多くの情報を分担して集め、ペア間で差異が生じないように、リサーチの可視化に努めたことが挙げられます。これは、昨年度全日本大会に出場された先輩から頂いたアドバイスだったのですが、調べたことを図式化してまとめ直す、というこの作業が私たちの議題への理解を格段に深めました。例えば他の参加国の立場についてまとめる際に、エクセルを使用して、各国のスタンスを書き込んで作成・出力し、マーカーを活用しながら各国の立場をわかりやすく色分けすることで、視覚的に整理され、会議当日に重宝しました。(山内さん)

 

準備の段階で苦労したのは論点ごとに自国の立場を確立していく作業です。立場の決定には自国の過去・現在の動向や未来に理想とする状況、さらには近隣国の状況や外交関係などを踏まえた上で、多角的に検討することが必要です。視野を幅広く持ちつつ、断固とした一貫性のある立場を決定する難しさを痛感しました。またイランをはじめとする中東についての、日本とは全く異なる歴史上の背景や価値観を理解するのに苦労しました。

 

そのためリサーチでは資料の情報を、ある時は出来事をポストイットに書き出し、時系列と立場ごとに分類したり、またある時は世界地図に色付けをしながら整理したりと、様々な方法で情報の理解に努めました。(小林さん)

 

 

大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。 

会議中は「信頼」を意識して交渉するよう心掛けました。たとえ交渉相手の立場が自分たちと大きく異なるとしても、相手の話にしっかりと耳を傾け理解を示すことにより「信頼」が確実に生まれ、交渉する上でプラスの材料となると感じました。また、会議中盤から終盤にかけて、異なる立場のグループと交渉する際には、リアルタイムで更新されていくグループの状況を頻繁に共有することで「信頼」を確立し、互いの妥協点を引き出すことに寄与できたと思います。(山内さん)

 

模擬国連において非常に重要な要素である交渉は、自国の主張の伝達に留まらず、合意のための妥協案を練ることを目的に行われる場合が多くあります。そのためイランとしての立場を持ちつつも、相手の目を見てその主張を真剣に聞き、合意に向けて最大限進展させるよう常時心掛けました。また立場の異なる国、あるいはグループと情報交換をする際に、論点を意識し相違点の明確化を意識することで早急な状況把握と判断にも繋がったと思います。(小林さん)

 

会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。 

あらかじめ考えていた政策が実際に展開された議論の方向性と合致せず、所属できるグループがなかったために会議序盤に孤立してしまったことが、会議の中で最も苦しい出来事でした。どう交渉しても、自分たちのボトムラインを切ってしまうような条件ばかりが提示され、一時は二人とも途方に暮れてしまいました。

 

その後モデが取られ、発言のチャンスを得たことが転機となりました。自分たちの政策を最大限反映させた新たなグループを形成し、1日目の最後にはWPの提出国になれたことで、孤立していた状況を乗り越えることが出来ました。「ピンチはチャンス」とよく言われますが、この言葉を身をもって体現できたのは、とても貴重な経験となりました。(山内さん)

 

2日目の他グループとのコンバイン交渉で、非国家主体についての武器移転規制に関しての議論がしばらく膠着してしまったことです。私達のボトムを切る内容が、相手のグループのDRの目玉となっていたため交渉が進まず、時間にも迫られた状況の中で内心焦っていました。しかしペアと綿密に情報交換を行って議場把握にも努めていたため、ペアが機転をきかせて違うグループとのコンバイン交渉を始め、実質別行動ながら同時進行することになりました。これにより交渉にも余裕ができ、DR提出に向けた最終段階でのコンバインで役に立ったため、逆境を活かせたのではないかと思います。(小林さん)

 

 

皆さんのスピーチのタイミングはどのあたりでしたか。また、議場に向けてどのようなことを訴えましたか。 

1st Sessionの後半のタイミングで公式発言をしました。議場に向けては、当時WPの作成を始めていたので、どの国と作業を進めているのか、どのような内容のWPなのか言及しました。また、私たちが考える会議の理想像についても訴えました。(山内さん)

 

 

スピーチは1st Sessionの後半に行いました。真に会議で議論をする意味と、実効性のDRを作成する重要性を訴えるようにしました。それにより、自然にイランとの協力に対する認識の変革を巻き起こせました。武器貿易条約の意義などに疑問をとなえるとともに、イランがどのような国であるか、イランと協力することのメリットなども受け取れるようにしました。また1st Sessionの中盤のモデで意見の一致するグループがないことと、交渉の余地がある点について公式発言をしました。(小林さん)

 

スピーチはどのように練習しましたか。特にこんなことを心掛けた、という練習方法や、その場で工夫したことなど、教えてください。 

当日は主にペアが公式討議で発言しましたが、準備は二人で内容を共有しながら進めました。練習では、2分という限られた時間の中でどこを強調し、他の大使の印象に残るようにするか、ということに重点を置いていました。公式討議で発言している時には、どうしても手元に視線を注いでしまいがちですが、一人一人の大使とアイコンタクトを取ろう、という気持ちで議場全体を見渡すよう心掛けていました。(山内さん)

 

スピーチでは「伝えよう」という気持ちを一番に持つことを最も大切にしました。私たちは、二人とも海外在住経験がないこともあり、より的確により多くの大使に伝えるため、強調する部分を太字にしたり文節で区切ったりしながら、ゆっくり丁寧に発言することを心掛けました。その場でも可能な限り大使一人ひとりの顔を見ながらの発言ができるよう練習を重ねました。(小林さん)

 

世界大会に向けての抱負を教えてください。 

世界大会への準備日程が先日始まり、「いよいよ世界に向けて漕ぎだす時が来たのだ」と身の引き締まる思いです。二人とも海外への長期留学経験はなく、正直なところ不安に思うことも少なからずありますが、世界中の高校生と熱く議論を交わすことができるこの恵まれた機会に「世界の模擬国連」を最大限に吸収して、国際社会を理解するという面でも、英語力・交渉力を養う面でも、そして人間的な面でも一回りも二回りも成長したいと意気込んでいます。世界大会に向けて多くの方がサポートしてくださるので、日頃から感謝の気持ちを忘れず、精進して参ります。(山内さん)

 

全く予想していなかった優秀賞をいただくことができ、大変感謝しています。不安は行動によってつけた自信で払拭できるよう、全力で模擬国連と向き合い、ひたむきに新しいことを吸収したいと思います。世界大会では全日本よりさらに高度な、実践的な英語力や交渉力、対応力などの能力を必要とする場合もあると思います。課題の一つひとつにじっくりと向き合い、人間的に成長し、聖心の建学の理念にあるように知性を磨き、実行力を養いたいと強く考えています。海外の高校生と模擬国連を通じて議論ができるのは、本当に貴重な機会ですので、後悔しないよう力を尽くして参りたいと考えています。(小林さん)

 

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