第12回全日本高校模擬国連大会
皆がなかなか耳を傾けてくれない時間帯のスピーチだからこそ、議場全体に呼びかける内容を考えた
灘高校[兵庫県] 担当国: ベルギー(議場A)
古賀大陸くん(2年)
[海外旅行・滞在の経験] 家族と一緒に海外で生活したことがある
藤川直人くん(1年)
[海外旅行・滞在の経験] 渡航の経験はない
(2018年11月取材)
担当国を希望した理由を教えてください。
ベルギーは違法な武器移転を厳しく規制していきたいと、国際社会に向けて多くの場面において公言しています。その原因となっている最も大きな理由は、国内での武器(特に小型武器)の違法輸出額の多さです。このような国内事情を踏まえて、ベルギーは違法な武器移転についての規制に積極的に働いている国々の意見も聞きつつ、アメリアやイギリスなどの国力を担う一端として機能している国に対しても参加しやすいフレームワークを形成するうえで有効に働くことができると、ペアと話し合って感じたので、ベルギーを希望しました。
担当国は「武器移転」について国際的にどのような立場を取っていますか。また、論点1・2についてのボトムライン(これ以上は譲れない点)を教えてください。
ベルギーは、本論点について国家の小型武器についての違法移転を国家が早急に対策すべき問題としており、移転した武器に関する報告書においてその報告を各国に任意ではなく、強制力の強い形でさせることを望んでいました。
ボトムラインについて、まず論点1に関しては、報告書制度において国際世界にていまだはっきりとした規制方法がない小型武器というカテゴリーについて明確に追加することを最低限求めました。
論点2については、抜け目のない非国家主体の定義を確立するために、その外郭となる国家主体及びその他の機関を概念的に定義づけるのではなく、はっきりと機関名を特定できるように定義づけることを最低限求めました。
上記2点は、いずれも自分たちがあらかじめ準備した政策の中に盛り込んでいます。
準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。
苦労したのは間違いなくリサーチですね。議題の特性的に正確なリサーチが困難だったため、武器移転という議題を模擬国連に落とし込んだ際、どのような対立軸が出て、それがどこまで細分化するか予想するのが極めて難関でした。
工夫したところは、もちろんリサーチにおいて幅広い知識を習得し、いかなる対立軸が出たとしても適応できるようにするというのはありましたが、それに加え、藤川と内政と外交の役割分担をし、準備を進めていくうえで議題、会議行動について「なぜそのような会議行動をとるのか、なぜそのような対立軸になるのか」自分自身の頭で考え個人の意見として頭にインプラントするためにも集まる時ははっきりとした目的を持って集まり、できるだけ一人の時間を確保するように努めました。(古賀くん)
今回の議題の特性もあって、リサーチに労力を要しました。武器移転に関する情報は国家の安全保障に大きく関与しており、本やネット上にはあまり有益な情報がありませんでした。工夫したことといえば、リサーチの際に目的をもって行ったことですね。やみくもにネットをあさってもあまり重要な情報を得ることはできないはずです。(藤川くん)
大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。
僕は内政をしていたので内政に関する話をすると、自分が当日常に意識していたのはグループメンバー全員の意見に耳を傾け、グループ内での細かく丁寧なコンセンサスビルディングを行うことでした。他のグループの国と交渉する際には、丁寧なコンセンサスビルディングと共に相手の譲れないラインを正確に見極め、同時に自国のボトムラインも常に忘れず妥協案を模索することを意識しました。(古賀くん)
相手国の「ここだけはゆずれない」ということを引き出すことです。「この内容の条文を追加したい」などの相手の利益を正確に理解し、その実現を手助けすることが重要です。ただ今回は最後の交渉が時間的制約もあって適切に機能せず、最終的なコンセンサスには至りませんでした。(藤川くん)
会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。
我々はコンセンサスを目指すうえであるきまった地域や意見を持つ国で集まったわけではなかったので、グループ内で意見を合わせていく作業が大変でした。ただ、上にも述べたとおり、丁寧なコンセンサスビルディングを意識した結果、1日目に他グループより時間はかかってしまったものの、2日目に全員がグループのアイデンティとなる政策を完全に理解したうえで有効に時間が使えたのではないかと思います。(古賀くん)
模擬国連に対する意欲でしょうか。高校は考査や受験といろいろ忙しく、模擬国連だけに全力を費やすことは難しい。また模擬国連以外にもやってみたいことはたくさんあるという状況において、多大な時間と努力を費やしてまで続けるべきなのか、疑問に思ったことは何回もありました。そんなとき「なぜ自分は模擬国連を始めたのだろう」と自問し、原点に立ち戻ってみることで模擬国連の醍醐味を再認識することができ、結果として全日本大会に参加し、優秀賞を頂けることになったのだと思います。(藤川くん)
皆さんのスピーチのタイミングはどのあたりでしたか。また、議場に向けてどのようなことを訴えましたか。
タイミングは会議の最後でした
模擬国連において、公式発言は基本的に聞いてもらえることは極めて少ないと思います。普段から聞きなれない英語で、難しい国際問題について語られても聞く気が起こらないのは当然です。
時間的制約が大きい模擬国連という競技においては、何もしていない時間があるという状態は大変違和感を覚えると思います。その何もしていない時間からの脱却を試みようとし、その最たる手段としてスピーチを聞かないという行動にいたるのかと。
特に会議最後のスピーチは、投票前、他グループの文言を必死に読み自国の国益と照らし合わせ投票行動を決定する最も大切な時間中に行われます。ただでさえ聞いてもらうことが難しいスピーチが、この時間はなおさら聞いてもらえないということは、大いに予想がつくと思います。
では、そのような状態で何を言えばいいのでしょう。その解は意外にも簡単で、聞いてもらえるようなスピーチをすればよいのです。これはよくありがちな自国についての情報をただ話す「事務的」なスピーチとは大きく異なり、当然自国について最低限の事は話すべきですが、それに加えて(むしろこっちの方が重要)全体に向けて会議の最終局面において、今までの時間内で何を達成することができたのか、そして今会議は国際社会においてどのような役割を果たすのか、それを踏まえてどのような最終行動を我々は国家という単体として、そして何より国連という集団としてとるべきか等、「全体」を意識したスピーチです。
よく非公式討議において会議の、進行の一助となるような行動を心掛けろとか言われますが、公式討議にもそれは適応すると、この1年間半模擬国連をやってきて感じます。結局のところ国益(僕の場合でしたらグループの利益)を重視するのは当たり前ですが、それゆえに「自分、自分」となっていては、国益を達成したいという自分と同じ思いを持つ大使に向けてメッセージを発するときに相手にされないのです。0か100を議論するのではなく、1から99で協議する。ここに模擬国連における交渉の本質があると強く感じます(もちろんこれは模擬国連においての、です)。
ゆえにベルギーは、全体に向け会議に参加した目的をもう一度問い直すようなスピーチを行いました。
スピーチはどのように練習しましたか。特にこんなことを心掛けた、という練習方法や、その場で工夫したことなど、教えてください。
スピーチに関しては、もともと4年間外国に住んでいたということもあり、自国の政策の説明や会議のシミュレーションを優先して、準備はそれほどしてきませんでした。ただ、その場の議論の流れに適しない話をしてもなかなか聞いてもらえない可能性が高いので、そうならないよう、常に議場の動きに対して敏感になることは意識していました。
世界大会に向けての抱負を教えてください。
自分が1年半やってきて、多くの事を学んだ模擬国連という競技に日本代表として国際会議に参加するという機会に、少し緊張と不安は覚えますが、同時に自身が高校生活で培ってきた様々な力が世界相手にどこまで通用するのか試してみたいと、ワクワクする気持ちもあります。加えて、今回はおそらく自分の模擬国連生活の集大成となるので、しっかり今までを振り返りつつ、楽しみながら進めていきたいと思います。ありがとうございました(古賀くん)
日本代表団としてニューヨーク大会に出場できるという貴重な経験を活かし、自己のさらなる成長につなげたいと思います。ありがとうございました。(藤川くん)