第12回全日本高校模擬国連大会
武器輸出・輸入両方の主要なステークホルダー国であることを活かし、立場の異なる国の意見に真摯に耳を傾けた
渋谷教育学園幕張高等学校[千葉県] 担当国 :イギリス
荒竹ゆりなさん(2年)
[海外旅行・滞在の経験] 家族と一緒に海外で生活したことがある
頓所凜花さん(2年)
[海外旅行・滞在の経験] 家族と一緒に海外で生活したことがある
(2018年11月取材)
担当国を希望した理由を教えてください。
武器移転という議題のみが公開されていたため、とりあえず武器輸出入額のランキングを見て、議題の主要なステークホルダー(利害関係者)となりうる国をリストアップしました。その中で、英国は武器輸出額が世界第6位、輸入額が第9位であり、輸出国・輸入国どちらの立場も理解できるのではないかと考えました。このほか、武器貿易条約(ATT)の主要提案国であることと、以前の会議でペアを組んだ時に、EU加盟国の大使を務めた時に上手くいったことも理由です。
担当国は「武器移転」について国際的にどのような立場を取っていますか。また、論点1・2についてのボトムライン(これ以上は譲れない点)を教えてください。
先に述べたとおり、イギリスは武器輸出の大国です。テロリストなどの手に輸出した武器が渡らないように防止する、などの国際益を守りつつ、イギリスに関してはかなりの割合で非国家主体に武器を輸出しているのが現状ですので、過度な禁止を防ぎ、経済的に悪影響を及ぼさないような立場を取るのが必然でした。
論点1の「通常武器移転制における透明性確保のための制度の再検討」に関しては、Small Arms Survey が毎年公開している Small Arms Trade Transparency Barometer でもイギリスはオランドと同点で2位という評価を得ています。これからわかるように、武器移転の透明性措置には真面目に取り組んでおり、国際的にも向上させていく意志はありました。ボトムラインとしては武器貿易条約に批准し、批准国に義務付けられた報告書を提出することです。
論点2は、まず非国家主体の定義から議論が始まりましたが、これは私たちのスタンスと合っていたので議場全体の流れに合わせました。ボトムラインとしては、人権侵害などのクライテリア(判断基準)を満たしていない非国家主体には輸出しないことでした。
準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。
武器移転規制に関わる国際的な枠組みはATT、関連安保理決議、ワッセナーアレンジメント、国連軍備登録制度、武器輸出に関するEU行動規範、国連小型武器行動計画などなど(これでも一部です)多数存在し、英国はその多くに参加しているため、多量のリサーチが必要なのが大変でした。また、議題の性質上、法的な文書を多く読む必要があったのにも苦労しました。
工夫したのは、自分が立場の異なる国の大使だったら、どのような反論や質問をするかということを考えて、反駁の内容を準備することです。特にモデなどの限られた時間で的確な指摘や返答を考えるのは困難なので、あらかじめある程度議論の内容をシミュレーションしました。(荒竹さん)
ペア間での情報共有をGoogle Documents を利用して工夫していました。役立ちそうなニュース記事や国連の成果文章をみつけた時は、二人に共有されているフォルダーにアップしていました。他には、当日のグルーピングを予想するために、全部の交渉ペーパーを印刷し、教室の黒板に貼りながら整理していました。こうすることによって、目で見る形でグループ分けができたので、会議当日のイメージがより強く浮かんできました。(頓所さん)
大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。
大会ということにとらわれないで、いつも通りの交渉を心掛けました。主導権を握りたいがために、強引な手法を取ってしまったり、審査されているという意識から緊張で意見をきちんと伝えられなかったりすると、かえって納得のいかない会議になってしまうと思ったからです。立場の異なる国と交渉するときは、相手の話をよく聞くことを心掛けました。「違う立場だ」という先入観にとらわれると、成果のある議論はできないと私は考えているので、各大使の主張の詳細まで尋ねて、合意できるポイントはないかをよく考えるようにしました。(荒竹さん)
自分達のグループだけに集中するのではなく、議場全体を見るように気をつけていました。特に、大会であるということで、自分が所属しているグループの主導権を握ることに集中しがちなのですが、そのままだと後のコンバイン交渉や議場全体の会議進行にも響いてきてしまいます。自分達だけではなく、議場にいるみんなのスタンスを理解していて、それをまとめられて、リードできるような大使になることを今会議の目標にしていました。(頓所さん)
会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。
DR提出前後から採決にかけての時間帯で、議場が大きく2つのグループに分断された時が一番大変でした。B議場ではDR1を私たちが、DR2を中国大使が提出したのですが、DRのもととなるWPの段階から主に論点2に関する立場から、互いに交わらない雰囲気がありました。
DR提出後、Yes・Yes交渉(提出したDRに互いにYesをしてもらうための交渉)を持ちかけたかったのですが、DRの内容が対立していたこともあり、難しい状況でした。自グループの大使の皆さんに、どのDRのスポンサーもしていない大使の方への交渉をお願いし、私はもう一方のDRのスポンサー国だけど、おそらく国益とずれたことが書かれているのではないかと考えた国の大使の方の説得を試みました。しかし、最終的に私たちのDRは通らなかったので、乗り越えたと言えるかは微妙です…。(荒竹さん)
今回の会議では自分のグループをまとめるのも、議場全体をまとめるのも普段の会議より大変だと感じました。EUのグループ内ではたくさんの意見や政策が出て、それらをまとめて一つのグループとしての政策にまとめるのが難しかったです。ここで勝手なことをしてしまったらグループからの信頼も失ってしますので、慎重に一つひとつ丁寧に話し合い、みんなの政策を合体する形で進めていきました。さらに、一日目の段階で7つのグループがあり、モデレーテットコーカスも少なかったために、全グループの人を集めて次の日の会議行動などについて話し合う機会がなかなか取れなかったです。(頓所さん)
皆さんのスピーチのタイミングはどのあたりでしたか。また、議場に向けてどのようなことを訴えましたか。
3rd Sessionの中盤です。この時点ではかなり議論も進んでいたので、事前に用意してきていたスピーチに修正を加え発表しました。武器移転に関する国の現状、スタンス、などを簡潔に説明して、これからの会議行動を説明しました。コンセンサスを目指しているということが私たちのスピーチの中心となるメッセージでした。
スピーチはどのように練習しましたか。特にこんなことを心掛けた、という練習方法や、その場で工夫したことなど、教えてください。
私はスピーチの原稿作成を行いました。模擬国連の会議ではかなり専門的な内容の話題を扱うため、つい難しい単語を使いがちですが、議場に自分の意見を理解してもらい、熱意の伝えるために、平易な言葉でわかりやすいスピーチを書くように心掛けました。ですが、世界中に公開されるスピーチであるので、もちろん、フォーマルさは忘れないようにしました。
世界大会に向けての抱負を教えてください。
中学3年生で初めての会議に参加してから、先輩方、会議を運営して下さる方々、会議で出会った他校の大使、そしてなにより顧問の先生と部の友達に模擬国連の楽しさをたくさん教えていただきました。少しでもその恩返しができるよう、世界大会を悔いのない経験にします!(荒竹さん)
私が模擬国連を始めた頃から、全日本大会で優勝して世界大会に行けることが目標でした。それが叶った今は夢のようです。世界大会を経験できるのは、とても貴重な機会です。自分の本気が発揮できるように完全な準備をして大会に挑みたいと思います。ここまで育ててくださった顧問の先生、模擬国連部の仲間、そして先輩方に心から感謝しております。頑張ります!(頓所さん)