第12回全日本高校模擬国連大会

武器移転の手法ではなく目的や理念から議論に入り、目指すべき理想像を共有して合意形成を導いた

桐蔭学園中等教育学校[神奈川県] 担当国: ニュージーランド

西田翔くん(1年)

 [海外旅行・滞在の経験] 家族と一緒に海外で生活したことがある

袴田英希くん(2年)

 [海外旅行・滞在の経験] 家族と一緒に海外で生活したことがある 

(2018年11月取材)

 

担当国を希望した理由を教えてください。

「地域との繋がりが強く、大国でもなく小国でもない立場から、積極的な協調策の提示を行え、国際世論をリードする国」という理念の下、担当国を絞り込んでいきました。その中でも特にニュージーランドは、今年になり軍縮と軍備管理担当の閣僚ポストを7年ぶりに復活させ、「軍縮に向けた行動」を国内外にアピールしているなど、武器移転対策を含む軍備管理に積極的に行っているため、希望しました。

 

担当国は「武器移転」について国際的にどのような立場を取っていますか。また、論点1・2についてのボトムライン(これ以上は譲れない点)を教えてください。 

2013年にできた武器貿易条約が採択されたとき、ニュージーランドは率先的に動き締結に大きく貢献した国であり、また特に近隣の太平洋諸国に向けた武器移転に関する支援や法整備のモデルとなるものを作成するなど、武器移転に関しかなり先進的な国です。

 

今回の会議におけるボトムラインは以下の通りです。

 

論点1に関しては、現状の報告制度は履行状況が高くなく、また報告された内容の正確性がありません。そのような現状を打破するための我々の政策である、「一度すべての国が国連総会に正確な武器輸出入に関して正確な報告を行う」というものを可決させ、この結果を基に新しい解決策を未来につなげるというものです。

 

論点2の非国家主体への武器移転に関しては、現在国連をはじめとする国際社会で共通の取り組みが行われておらず、主に新しい枠組み作りに焦点が当たっていました。ただ、新しい枠組みは交渉が難航する恐れがあり、不確かなものでした。そのため、少なくとも現在も行われている「安全保障理事会による制裁リスト」といった既存の取り組みを積極的に維持していくことは、最低限譲れない点でした。

 

準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

違う意見を持ったグループと最終的に一つの決議案を作るときに、どのような解決口があるのかというのを、会議前に配布された交渉ペーパー(各大使の意見をまとめたもの)や過去の実際の発言などから会議本番で予想される意見やグループを予想し、対策をできる限り行ったことです。(西田くん)

 

会議準備の際には、文言の準備やスピーチの練習といった「やるべきこと」が挙がってきますが、その全てにおいて、ただ形式的に終わらせるのではなく「実際の会議で使えるのか」ということを常に意識して準備を行いました。

 

具体的には、文言の準備の際に、ただ文書のまま印刷するだけでは読みづらく、特に強調したいことが伝わりづらいと考えたため、図を用いて文言内容を説明したスライドを印刷し、会議に持参しました。(袴田くん)

 

 

大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。 

会議では、もちろん全ての大使が持ってきている具体的な政策は異なるため、本質的にどこが似ているのか・どこが対立していて深い議論が必要になるのかというのを瞬時に考え、できるだけ多くの大使から文言を取り込み、一つの決議案を作成しようとしたことです。また、今回我々のペアが目指したのは全会一致であり、それを達成させるためにも、1日目のかなり早い段階から、自分のグループだけでなく他グループのことも視野に入れ、会議全体を自ら作り上げるという意識を持って2日間行動しました。(西田くん)

 

会議当日は、比較的意見の近い国で集まったグループ内でも、主張したい対策の手法、政策は国ごとに全く異なっていました。この状態から合意を形成するのは非常に難しく、交渉が進展しない恐れがありました。

 

そのため、手法ではなく目的・理念から議論に入ることを心がけました。最初はグループの全員で目指すべき理想状態を考え、一言でまとめることからはじめ、その後もすぐに政策移らず、現在の取り組みの問題点等を全員で共有しました。その結果、政策面での合意が比較的スムーズに進んだ事はもちろん、その場で新しい政策が生まれる事も多くありました。(袴田くん)

 

会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。 

初めのアンモデレート・コーカス(非着席討議)が採択されたとき、議場はたくさんの集団ができ、かなりの混乱を招いてしまいました。その際には、誰よりも早く動き、今後全会一致を目指すためにもできる限り情報収集を行い、会議全体の把握と困っている他大使の手助けとなれるように動き回りました。(西田くん)

 

会議全体を通して大変だったことは、文書提出までの時間管理です。タイムスケジュールの確認や、議論の進捗状況をまとめるなどして効率化を図りましたが、それだけでは不十分でした。

 

自分ひとりで乗り越えたことではないのですが、他の大使が文言作成や議論をまとめる作業を手伝って下さり、それによって作業速度が向上しました。その際に、今必要な作業を書き出しておいたことで、より効率的な作業分担に繋がったのだと思います。(袴田くん)

 

 

皆さんのスピーチのタイミングはどのあたりでしたか。また、議場に向けてどのようなことを訴えましたか。 

今回、1stSessionのはじめ頃に公式発言の順番が回ってきました。1回目のアンモデレートコーカス終了時だったため、議場としては意見の近い国々と集まり、まずはWP提出に向けた議論をはじめたばかりの段階であり、まだグループ間の交渉は行われていませんでした。

 

そのため、自国やグループの状況を伝えるよりも、全ての加盟国に関わる「世界がなぜ武器移転規制に目を向けなければならないのか」ということに焦点を当てて発言しました。

 

そして、この国連総会という場における各国の大使の責任は何なのか、どのような一歩が必要なのかという事に注力し、最終的に全会一致が必要不可欠であることにつなげていきました。(袴田くん)

 

スピーチはどのように練習しましたか。特にこんなことを心掛けた、という練習方法や、その場で工夫したことなど、教えてください。 

公式発言は、唯一他の大使全員が話を聞いてくださる重要な発言です。そのため、多く話すのではなく、短く、けれども伝えたい点がどこなのかを明確にすることで、議場全体に訴えかけるように話すようにしました。(西田くん)

 

事前に原稿を考える際は、特に文章の分かりやすさに気を付けました。具体的には、日本語で一度文章を考えそれを英語に訳したのですが、その際に聞き慣れない英単語を用いず、なるべく平易な表現で置き換えるよう心掛けました。

 

発言内容は会議の状況に応じて臨機応変に変更していくため、完全暗記は難しく、そこまでする必要はないと思います。ですが、発言時は多少なりとも緊張するので、聴衆に目線を向けている内に、どこまで話し終えたか忘れるリスクがあったので、ある程度はそらで言えるように流れの確認をしました。

 

本番では、時間が足りず最後まで言い切れなかったり、逆に早く話した割に時間が余り過ぎてしまったりすると悲しいので、事前に半分(1分)までに話し終えておくべき場所に見当をつけておき、その目安と現実との差異に応じて、話す速度の調整を行いました。細かい話ですが、手元にタイマーを置いておくと意外に助かります。(袴田くん)

 

 世界大会に向けての抱負を教えてください。 

初めての英語のみの会議なので、言語の壁に当たる可能性が十分にありえますが、今ある時間をたっぷりと使い事前会議準備だけでなく英語力の強化も行いたいと思います。世界大会は、今までよりも多くのことを学べると思うので、真剣に頑張りながらも会議を楽しみたいと思います。(西田くん)

 

国籍・言語・文化も異なる人が集まるため、今までとは異なる部分もたくさんあると思います。その中でも、今まで日本の高校模擬国連で培ってきたものを、出来る限り多く活かしていけるよう納得のいく準備をし、より良い経験が得られるよう頑張ります。(袴田くん)

 

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