(2018年8月取材)
全国高校教育模擬国連大会を取材して、関東が中心であった模擬国連が全国に広まった、とようやく言えることに感動しました。まさしく、北は北海道、南は九州という言葉を当てはめられるときが来たのです。その結果、多くの初心者が会議に参加するようになり、今回は初心者会場が二つ設けられました。
初心者会場の参加者は、会議が進むにつれて積極的に議論をかわし、互いを尊重しながら交渉している姿が印象的で、彼らは非常に有意義な時間を過ごしたのではないかと思います。一方、経験者会場も日本中から集まった参加者が熱のこもった議論を交わしており、彼らの熱意は心に響くものがありました。
しかし、これら二会場を比較すると、経験者会場は少し荒っぽさが目立ったのではないでしょうか。教育模擬国連会議はアワードが出る会議です。そのため、少しでも目立とう、会議に貢献しようとする姿が荒っぽさを生み、他の大使の発言を軽視したり、尖った口調が多かったりと残念な部分も見られました。経験者の皆さんには、時間があればぜひ初心者会場を客観的に見て欲しいと思います。この会場は、全員が通ってきた原点なのだと再確認し、互いを尊重し合えるような、人間的にも評価が高い大使を目指して模擬国連活動に取り組んでほしいと思います。
初心者の皆さんにも一つだけアドバイスをさせていただくと、決して高校の授業をおろそかにしないでほしいと思います。高校の授業では、直接的に議題と関わる情報も多々ありますし、人と関わるための姿勢という意味で、勉強になる考え方が多くの授業に散りばめられています。受験のためや試験のためだけでなく、皆さん自身を成長させる材料としても、高校の授業も集中して取り組むべきだと、私の反省も込めてみなさんに伝え残したいと思います。
私は高校模擬国連によって、グループリーダー特有の役割や責任の難しさを実感し、様々な会議で挑戦し高めることができました。多くの高校生に、自分の人生・価値観を変えるこの「模擬国連」体験をお勧めします。そこで、私の模擬国連経験から得た「良いグループリーダーに見られる3つの共通点」について紹介するので、ぜひ参考にしてほしいと思います。
(1)戦略的にグループ運営を考えること
グループを構成する方法・会議内でのポジショニング・決議案の方向性・他グループとの合併予定を決めること。またその中で、他グループよりも秀でた点を考えること。
(2)会議全体の視点を持つこと
会議の進行状況・グループのポジショニングを分析し、決議案作成の計画などの軌道修正を行うこと。
(3)グループに所属する動機を与えること
話しやすい雰囲気や主張を積極的に聞くなど「このグループにいたい」と思える環境を構築すること。
このように共通点を箇条書きに述べましたが、「良い」グループリーダーかどうかの明確な基準はありません。そこに、自分なりの理想像に向けて試行錯誤する模擬国連の醍醐味があります。
しかし、グループリーダーになることのみが模擬国連ではありません。国連や国際問題を深く理解したい、議論やスピーチする力をつけたい、他校からの刺激を受けたいなど、取り組み方によって多くの成長を遂げることができます。そんな様々な顔を持つ模擬国連に、より多くの高校生がぜひとも触れてほしいと思います。
第2回教育模擬国連に、カメラマンとして取材に参加させていただきました、私は全くの模擬国連素人です。歴戦の“モギコッカー”である記者の小寺くん・小塚くんに様々なことを教えてもらいながらの取材となりました。
取材中、まず驚いたのは経験者会場で最初のアンモデが始まったときでした。それまで静かだった会場に一斉に各大使の声が響き、グループを作るべく人の波が起こりました。アンモデにおける人の波は最初に限らず、撮影中何度かその波に巻き込まれそうになることも。
一方で、始終議論のまわりに“いる”だけの大使も見受けられました。確かに場の流れに身を任せるというのも戦略の一つかもしれませんが、それでは自分の意見を通すことは難しいでしょうし、やはり自発的に行動を起こすことの大事さを感じました。積極的に手を挙げ声を挙げ、イニシアティブを取れるような大使には、自然とカメラを向けたくなってしまうものです。
事前に準備してきた膨大な資料を片手に、自国と世界のために議論をする―制服姿で。そのような大使たちの姿を、ファインダー越しにたくさん拝見しました。私は高校を卒業して久しいですが、経験者・初心者にかかわらず高校生の大使たちから学ぶべきものをたくさん見付けられた気がします。