第2回全国高校教育模擬国連大会に参加して

スイス大使

岐阜県立岐阜高校 深澤俊輔くん、田島梨々夏さん(2年)

(2018年8月取材)

 

皆さんの担当国は、サイバーセキュリティについてどのような立場を取っていましたか。

 

欧州評議会(Council of Europe)が作成した、サイバー犯罪条約で重視される、情報の自由な通信に賛成する立場を取っていました。しかし、この「情報の自由な通信」という点は各国の間で対立もあり、なかなか合意の取れない状況が続いていました。しかし、サイバーセキュリティの問題解決のためには各国の合意と協力が不可欠です。そのため今回の会議では、サイバーセキュリティにおいての国家主権の容認も視野に入れ、各国の合意が取れることを目標としていました。

 

教育模擬国連出場に向けて、どのような準備をしましたか。

 

自国の政策を考える上で重要なPPP(Position and Policy Paper)の作成を丁寧に行いました。自国の政策を盛り込んだ WP(Working Paper)の草案を製作したり、PPPに書かなくてはいけないことだけでなく、自国のサイバーについてのニュース等を調べたりして、どのような立場を取るか考えました。また、自国以外の立場の国についても情報を集めました。

 

同じ学校から参加する生徒のほとんどが模擬国連への参加経験が浅かったため、国割が発表される前に、自分たちで担当国を決め、今回の議題であるサイバーセキュリティについて議論をする「校内模擬国連練習会」を行いました。この練習によって模擬国連活動に慣れるとともに、本番の担当国とは別の国の視点からサイバーセキュリティについて考えることができたため、議題を多面的に見ることができるようになりました。

 

準備の段階で苦労したことがあれば教えてください。

 

スイスは永世中立国であるためEUにも所属しておらず、立場がはっきりと定まっているわけではないため、どの立場を取るか考えるのに苦労しました。ニュースや記事を読み自分たちなりの政策を考えることが大変でした。様々な国の架け橋となることを準備の段階から決めてはいましたが、他の国の大使がどのような政策を取ってくるのかがわからない中、自分たちがどこまで妥協することができるのかを考えることにも苦労しました。

 

大会当日は、どのようなことに気を付けながら会議に臨みましたか。

 

私たちスイス大使は、サイバーセキュリティや情報統制、サイバー犯罪条約について比較的中間の考えを示す国として、対立軸になるであろう、自由なサイバー空間を求める主に欧米側の立場と、国家主権を守りつつ場合によっては情報を統制するロシアや中国側の立場、さらにサイバー先進国と発展途上国の懸け橋になれるよう行動しようと意識しました。はじめはどこかのグループに属すことを考えましたが、私たちのような政策を考えているグループがなかったため、他に似た考えを持つ国の大使さんと協力して新たに「中間国」という枠組みを作成しました。

 

そこで気を付けたのは、中間という立場として自国もある程度の妥協をしつつ、他の国にも少しずつ妥協をしてもらうことの重要性です。 政策が似ていたり、妥協の余地があったりする国やWP同士でコンバインを進めることで、今回の会議の目標であるコンセンサンスに向けて取り組もうと行動しました。

 

会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

かなり多くのWPが作成されたことによって、同じ意見を持ったグループが複数できてしまい、それらのグループを一つのグループにしていくのが大変でした。自分たちのグループの意見をわかりやすくまとめ、別のグループに説明することで情報共有を進め、「中間国」のグループをまとめようと努力しました。

 

教育模擬国連に参加した感想をお話しください。

 

私がこれまでに参加した模擬国連大会では、初めにモデ(着席討議)を行って方向性を決めるというのが主流でしたが、今回はいきなりアンモデ(非着席討議)から始まり、どのように行動しようか迷いました。その中で、スイスの方針であったサイバー犯罪条約について中立の立場を取る国のグループを作ることができたことはよかったです。しかし、2日目はコンバインで揉めてしまって情報共有がうまくいかず、結局DR(決議案)を提出することができませんでした。しかし、中間国の集まりで協力してくださった他のスポンサー国の大使さん等から多くのことを学べた良い会議でした。(田島さん)

 

今回の大会は、私が今までに経験した模擬国連大会の中で最も規模の大きいものでした。私の議場で初日に提出されたWP(Working Paper)の数は7つにも上り、その全てを細かなところまで読みこんで、翌日にどのグループと協力するかなどを考えるのは大変でした。当初は、中立のグループはかなりの少数派でした。しかし、自分の殻を破って多くの国の大使の方々に理念や意見を説明したことで、多くの大使の方々に共感してもらうことができました。中立の立場を取るグループで協力してくれた大使の皆さんはもちろん、合意には至らなかったものの、互いの政策を語り合うことのできた全大使の皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。

(深澤くん)

 

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