(2018年5月取材)
世界各国の代表の高校生が、自分の国とは異なる国の大使となって国際問題について議論する「高校模擬国連国際大会」が、2018年5月11日・12日の2日間、ニューヨークの国連本部で開催されました。日本からは、昨年11月の第11回全日本高校模擬国連大会で代表に選ばれた6チームが参加。ウルグアイ(ウルグアイ東方共和国)の大使として会議に臨みました。
日本チームが担当したウルグアイは南アメリカ南東部に位置し、国の北を東でブラジル、西をアルゼンチンに囲まれ、南側は大西洋に面しています。人口は約340万人、面積は17.6万㎢(日本の約半分)と南米の国家としては小規模ですが、政治や労働はこの地域では最高度の自由を保っていると言われ、国民の生活水準はチリに次いで南米2位という、非常に興味深い位置づけの国です。サッカーも盛んで、2018年のワールドカップロシア大会南米予選では、ブラジルに次ぐ2位で本大会出場を決めています。
今回の高校模擬国連国際大会には26か国から約1500人が参加。UNESCO(国際連合教育科学文化機関)、UNIDO (国際連合工業開発機関)、SC(安全保障理事会)など16の会議で、国際社会が抱える問題を討議しました。
[出場チーム/ 担当会議/ 議題]
国連総会第三委員会(General Assembly 3:社会、人道、文化委員会)
『Political prisoners and prisoners of conscience about the freedom of expression
(政治犯と良心の囚人~表現の自由について~)』
・「諦めずに話し続けた結果、決議案に全ての政策を盛り込むことができた」水口幸生くん
・「事前に具体的な政策を用意。日本の高校生の真面目さを実感!」」高田陽一郎くん
国際連合工業開発機関(UNIDO:United Nations Industrial Development Organization)
『Sustainable production of biofuels in developing coutries
(発展途上国におけるバイオ燃料の持続可能な生産)』
・「綿密な準備と円滑な合意形成で、発展途上国のまとめ役に」山田健人くん
ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC: Economic Commission for Latin America and the Caribbean)
『Strengthering Social Protection for the Most Vulnerable
(社会的弱者への社会保障の普及と向上)』
・「予想外の会議設定にも、万全の準備とチームワークで臨機応変に対処」石川満留さん
・「一国一国を尊重して向き合い、自分が追求してきた模擬国連を貫く」E・Hさん
世界知的所有機関(WIPO:World Intellectual Property Organization)
『Patent Rights vs. Patient Rights(医薬品の特許権 vs. 患者の権利)』
・「派遣生や大使たちの熱い思いに触れ、自分も頑張ろうという気持ちに」橋本京さん
・「相手に敬意を持って接することで信頼関係を築くことができた」元田有香さん
『Election Monitoring (選挙監視) 』
・「安全保障理事会の役割や特殊性と向き合い、難しい課題に挑む!」永見大智くん
・「『心の耳』で相手と話すことで築いた信頼が、会議を成功へ!」渡邊玲央くん
国際連合教育科学文化機関(UNESCO: United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)
『Fiding the right balance between tourism and conservation
(観光と環境保全の適正バランス)』
・「想定通りに進まない場面にも備えて万全の準備を心がけた」青木優奈さん
・「コミュニケーションを大事にする努力で、各国大使が心を開いてくれた」鎌田康生くん
今回の国際大会の様子は、NHKのBS1の番組でも紹介されました。参加する大使達は、服装一つとっても民族衣装に身を包んだ人もいれば、かなりカジュアルな格好の人もいて、全日本大会とは全く異なる雰囲気です。飛び交う英語もまさにマシンガントークで、この中で異なる立場の国を説得したり、自国の利益になるように交渉したりしながら合意形成に持ち込むのはどれほどたいへんだったが伝わってきました。
そんな中で、日本代表の大使達の礼儀正しさや周到な準備、そしてタイミングのよい発言やなかなか議論に加われない国への細やかな配慮は、会場の多くの国々から尊敬を集め、議長団からも高い評価を得たそうです。たとえ英語にハンディがあっても、相手ときちんと向き合い、尊敬を持って接する姿勢は国際会議の場でも信頼され、リーダーとして認められることにつながることを、今回の派遣メンバーの皆さんが改めて示してくれました。