つくばサイエンスエッジ2018

めざせ、大空に羽ばたく鳥型ドローン!~完璧な観測のための鳥類バイオミミクリー研究【航空力学】

東京都立科学技術高校 フライング・オブジェクト・プロジェクト 鳥類バイオミミクリチーム

三田潤哉くん 本間史哉くん

(2018年3月取材)

(左から)三田潤哉くん 本間史哉くん
(左から)三田潤哉くん 本間史哉くん

本物の鳥の飛行を模倣した、鳥型ドローンの開発をめざして

バイオミミクリーを使って鳥型ドローンの開発をしています。バイオミミクリーとは、生物の機能を模倣することで新しい技術を生み出す学問のこと。生物や生命を意味する「バイオ」と、模倣を意味する「ミミクリー」の2つの言葉を組み合わせた言葉です。

 

ドローンは、ラジコンで操れ、操作性が高いのですが、長時間飛行ができません。またドローンは動物に対しては機械の騒音などでストレスを与えてしまいます。

 

僕たちは、鳥の機能を模倣することで、自然な観測のできる完璧なドローンを開発したいと考えたのです。

 

渡り鳥の滑空飛行を真似てみよう

鳥類の種類には留鳥と渡り鳥の2つがあります。留鳥とは主にハトやカラスなどの生活域の狭い鳥、渡り鳥はツバメやアジサシなど海を越えたりする、生活域が広い鳥です。

 

この2タイプの鳥の特徴を比べると、渡り鳥の方が全体的に羽ばたきの回数は少なく、翼が大きいという特徴があります。渡り鳥は滑空という飛行方法をしており、それを模倣すれば、省エネで長い距離を飛行ができると思い至りました。

 

実験1 ガルウイングによる効果実験―カモメの翼のように羽ばたかせるには?

僕たちは、ガルウイング(=カモメの翼)に注目しました。渡り鳥は、翼を斜めに曲げたり動かしたりしながら飛んでいます。その飛び方のメリットを調べるために、カモメの翼を模倣したガルウイングを作りました。そして、自作の風洞実験装置に入れて、飛行実験を行いました。

風洞実験装置
風洞実験装置

翼が水平のとき(=180度)のほかに、傾き角度150度、120度といった具合に曲げて風洞装置の中で飛行させた結果、カモメの翼の傾きによって、浮き上がらせる力(揚力)に大きな差はありませんでした。

上図:ガルウイング(水平)、下図:ガルウイング(120°)
上図:ガルウイング(水平)、下図:ガルウイング(120°)

 

実験2 飛行機と鳥の比較実験―どちらが優れている?

2つ目に飛行機の翼と鳥の翼では、滑空飛行するためにどちらの性能が優れているか比較実験を行いました。

 

一般によく知られる飛行機の翼の断面形状は、前の縁が丸く、後ろ縁が尖った形状をしています。このような形状の理由は、飛行機が効率よく揚力を発生させるためと説明されています。そこで飛行機がより飛びやすくなるために設計された断面と、鳥の翼の断面を比較したのです。

 

その結果、鳥の平均的な翼型と飛行機では、揚力は同じくらいでしたが、鳥の翼型の方が抗力は小さいという結果が出ました。揚力と抗力の2つの結果から、鳥の翼型を使用する方がよいということがわかりました。

 

奮闘!鳥型ドローン試作機製作~本物の鳥みたいにふわりと羽ばたく試作機ができた!

僕たちはまた、実際にどう羽ばたきをすれば飛べる機構を作り出せるか、試作機を開発しました。できるだけ本物の鳥の羽ばたきに近づけたかったので、試作機1号機では、糸とばねを使った柔軟な羽ばたき機構にしました。

 

1号機は、羽をバタバタ上下させるフラッピング運動という鳥の羽ばたき運動を再現することができました。しかし羽ばたくスピードが速すぎるなど欠点が出て失敗でした。続けて2号機を作りましたが、これも失敗。

 

さらに遊星歯車機構というものを使って動かす3号機を作りました。真ん中に太陽歯車があり、それが回るとそれに応じて遊星歯車がゆっくり回る仕掛けです。モーターを回すと太陽歯車が回り、その動力が遊星歯車に4分の1の回転数で伝わり、羽ばたき運動をしました。

 

回転数は自在に調整できるので、ふわりと羽ばたかすことも、速めることもできます。それで本物の鳥のような羽ばたきができるようになりました。

 

左から試作1号機、2号機、3号機
左から試作1号機、2号機、3号機

 

今後は遠隔操作できるように、電動の制御装置を搭載すれば、鳥型ドローンはいよいよ完成に近づくと思っています。

 

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