つくばサイエンスエッジ2018
(2018年3月取材)
アマガエルが食べやすい餌、食べにくい餌に興味を持ち、実験してみた
多くの動物の採餌行動は、複数の感覚器官を使って餌を認識し、採餌行動をとりますが、カエルは視覚によって餌を認識し、動くものに対してのみ採餌行動をとることが知られています。
飼育していたアマガエルが食べやすい餌、食べにくい餌の種類があることに興味を持ち、どのような視覚条件がカエルの採餌行動に影響を与えているのか、実験しました。パワーポイントのアニメーション機能を使って、アマガエルの目の前で図形を動かすという新しい実験方法で行いました。
実験1 アマガエルは赤いエサを認識しにくい!
色に対する反応を比べる実験では、アマガエルは青や緑の図形に比べ、赤の図形に対し採餌行動をとりにくいという傾向が見られました。生き物が色を認識する際に使う錐体細胞には受容する光の波長によって異なった種類のタンパク質が用いられます。アマガエルは長い波長の赤色を認識しにくいという可能性が考えられます。
実験2 アマガエルは横方向に動くエサに弱い!
物体の進行方向を変えて、反応を見ました。すると、アマガエルは上下方向、すなわち縦方向に動くエサに対して、採餌行動をとりやすいという傾向が見られました。
アマガエルは動く物体を認識したとき、まず物体に対して体を向ける向き直り行動を行い、その後餌に飛びつくという2段階の行動を行います。餌が縦方向に動く場合、そのまま捕食行動に移行することができます。しかし、横軸方向運動では、まずアマガエルは横へ向き直る行動をする必要があり、捕食行為に移行しづらかったのではないかと考えています。
実験3 アマガエルは自分より大きなものをエサと認識しない!
直径10センチから0.1センチまでの5つの大きさの図形をアマガエルに提示し、採餌行動を観察しました。アマガエルは、直径0.5センチではひんぱん採餌行動をとりますが、直径3センチではまったく行動しませんでした。
アマガエルの成体の大きさが、おおよそ3センチであることから、アマガエルは自分が飲み込めないと判断した大きい物体を餌と認識しなかったのではないかと考えました。
実験4 アマガエルは素早く動く餌に、ムダな採餌行動を取らない!
秒速30センチから秒速0.1センチまでの6段階の速度で図形を連続して提示した結果、秒速1センチのとき最も採餌行動をとりやすく、速度が上がれば上がるほど採餌行動をとらなくなるという結果が得られました。
アマガエルは採餌行動の際に失敗を抑え、無駄な行動を抑える目的で、むやみに採餌行動をしないという性質があるのではないかと考えました。
講評の先生との質疑~アマガエルは学習するか 満腹中枢はあるか
――実験に慣れて、だまされなくなったようなアマガエルはいませんでしたか。
岸野くん:3週間飼育たつと、頻繁に採餌行動をとっていた「白地に黒」に対して採餌行動をしなくなるという結果が見られたことから、ディスプレーがエサでないことをアマガエルが学習してだまされなくなった可能性が考えられます。
――アマガエルに満腹中枢はあるのでしょうか。
岸野くん:満腹中枢はあると思います。あまり食べすぎると、やはり餌に興味を示さなくなる様子が見られたので、今回の実験も最後の餌を食べてから4日後に行うことにしました。また何が嫌な味なのかも、アマガエルは認識できるのではないかと考えています。