全日本高校模擬国連大会2017

ジェンダー平等の先進国だからこそわかる「理想像」を伝える努力が実を結んだ

鳥取県立鳥取西高校

青木優奈さん(2年)、鎌田康生くん(2年)

担当国:ノルウェー 

(2017年11月取材)

左から 鎌田康生くん、青木優奈さん

写真提供 グローバル・クラスルーム日本委員会

 

1.担当国を希望した理由をお教えください。

 

私たちは、今回の議題であった" Human rights and Gender equality"の、特にGender equality に対して明確な意見を持っており、国の状態が、私たちの理想であり目標とするべき姿だったため、ノルウェーを希望しました。特にノルウェーの男女平等は、女性が第一声を上げたことに端を発しており、国家に男女平等の達成がノルウェーという国に必要不可欠なものだという問題意識を持たせ、急速な変革を遂げた点に注目しました。

 

また、日本でもノルウェーから学ぼうとしている動きがあるように、ノルウェーが行い、創り上げてきたジェンダー平等達成のノウハウを他国に、そして世界中に広められるのではないかと考え、ノルウェーを希望しました。

 

2.皆さんの担当国のジェンダー平等に対する姿勢と、国際社会で問題になる(と考えられる)点を教えてください。

 

ノルウェーはジェンダー平等促進のため、「公共機関においてどちらか一方の性が4割を下回ってはいけない」という「クオータ制」を導入しており、積極的に両性の人権を保障し、どちらかが弱い立場にある際には、それをしっかりサポートしていく制度があります。また、ノルウェーには、1978年に成立し、1979年に施行された「男女平等法」という法律があります。この法律の成立の過程には、女性運動団体の働きが決定的役割を果たし、男女平等に関する意識改革の促進、更にノルウェー社会の変革に重要な役目を果たしました。そして、この法律により設置された「男女平等オンブッド」は、法律の条項が守られているかを監視します。さらに、いかなる人、いかなる組織や団体でも、性差別を受けていることを感じたら、このオンブッドに訴えることができます。

 

ここで見られるような、誰でも・どんな立場の人でも声を上げられる、モーションを起こせる機会の欠如が、世界での大きな問題の一つとして挙げられると思います。その背景には、宗教的思想や伝統的価値観などによる制限が深く根付いており、特にイスラームの考えと、欧米の考えには大きな隔たりがあり、平等実現への妨げとなっています。その差異を理解し、熟考した上で、どう前進していけるかが問題になると考えます。

 

3.準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

 

準備の段階でできるだけのことはやろうと考えていました。自国だけの情報でなく、なるべく多くの国の情報を得て、議論や交渉に生かそうと、たくさんの本やインターネット上の国連資料などを読み漁りました。本は日本語のものしか手に入らず、ノルウェーに関する最新の情報が手に入るかと問われると微妙ですが、インターネット上にはノルウェーが提出した報告書や決議案が多々あり、重宝しました。そのほとんどが英語で、中には200ページを超えるものもありましたが、英語が得意だったことや内容に大きな関心があったこともあり、資料を読むことは苦ではありませんでした。強いて言うならパソコンの画面を見続けるのが辛かったため、ひたすら紙に印刷して読み進めました。(青木さん)

 

本番で提出するDDやDRは自国の草案を予め作成して、それをベースに、本番で提出するものを他国と相談する際に主導権を握れるようにと用意していました。これらの準備をするために、国割発表から本番までの間、連日夜中までの作業をしたのが、個人的には非常に苦労しました。(鎌田くん)

 

4.大会当日は、どのようなことに気をつけながら会議に臨みましたか。

 

一番大切にしたのは、自分のチーム内で交渉をする上での発言内容やボトムラインを一致させることです。そうした上で、立場や考えの近しい国、また協力体制を築くことのできそうな国を集めて交渉し、さらにその上で多様な国々との段階的な交渉を進めていくことを目標にしていました。また、交渉の終盤では特に、主にイスラーム圏の国々との歴然をした違いを認識し、粘り強く話し合いを進めていくことを意識しました。

 

しかし実は、同意はできるものの、方針の違いやボトムラインの違い、重要視するポイントなどの細かなズレがある国同士での交渉が、想像以上に困難でした。そのため、できるだけ相手の要求を正確に理解しその上で、冷静に適切かつ建設的な発言をすることを意識しました。(青木さん)

 

自分たちが突っ走り、他の人たちとの間に軋轢が生まれないよう、各国へのリスペクトを忘れないように気をつけていました。私は、自グループ内の文書作成を他国の大使とともに行う役回りの中で、他国の意見の中に埋もれてしまう国がないよう、全ての国の意見を集約すると同時に、文章をただくっつけただけで内容が矛盾してしまうことにならないよう気をつけていました。(鎌田くん)

 

写真提供 鳥取西高校
写真提供 鳥取西高校

 

5.会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。 

 

立場に大きな差がないのに、フォーカスする点が違うために別のグループに所属している国に交渉して、自分たちのグループに参加してもらうことが大変でした。また、交渉や他国を説得するポイントなども、私たちが当初予定していたような内容に持っていくことが難しく、かなり絞られた一部の点だけに固執しすぎて、他のグループとのコンバインが思うように進められませんでした。(青木さん)

 

最初のDD提出時に、自グループ内の意見をまとめ切れていないのに締め切り時間が近づき、加えてスポンサー国が12カ国にあと1か国足りなかったことです。私はなかなか文章を作成する場から離れられませんでしたが、他の手の空いているグループ内の大使たちを総動員してグループ外の国との交渉にあたり、何とか1か国協力してくれることとなり、事無きを得ました。(鎌田くん)

 

6.皆さん自身はジェンダーの平等についてどのような考えを持っていますか。また、それは今回の担当国の立場とどのような点が同じ(あるいは違う)でしたか。

 

日本では、女性がもっと主体的にアクションを起こしていく必要があると強く思います。何気ない日常生活の一つひとつをとっても、やはり周りでは男子、男性が優先されていることをよく感じます。しかし、本当の変革を成し遂げ、新しい風を日本に吹き込むためには、何かを待ったり誰かが行動を起こすのを期待したりするのではなく、当事者とも言える女性自身が先頭に立つ必要があると思います。

 

このような点において、ノルウェーという国は、まさに女性が先頭を切って改革を行ったことで社会は大きく変わりました。日本も、その他の国々もこのような姿から学び、実践していくべきだと思います。(青木さん)

 

私は、ジェンダー平等とは宗教や慣習などに影響されず、全ての場所で性にかかわらず全ての人が権利を享受できることによって達成されると考えます。これまでも、日本の現状を新聞などで見たり、海外へ行ったり、海外のことを知って日本と比べたりする機会があるたびに、現状の日本はジェンダー平等の観点からみるとものすごく遅れていると感じていて、調べてみると実際そうでした。

 

その上で担当国に決まったノルウェーについて調べて見たところ、「人口の半分を占める女性が決定機関(議会など)で半数を占めるのは当たり前」という考え方のもと、クオータ制などを利用して男女平等を達成しているノルウェーの精神は、私の考えをさらに進め、具体化したものでした。

 

性的少数者については、当たり前に存在するものであると考えるノルウェーの立場は、まさに目からうろこでした。それに関しては、私の持っていた考えは、ノルウェーのものと方向性こそ同じであれ、進み具合としては全く及びませんでした。しかし調べを進めて学んでいくうちに、自分の考えが整理され、具体的になり、発展させることができ、大きな良い影響を受けることができたと思います。(鎌田くん)

 

7.世界大会に向けての抱負を教えてください。

 

世界各国の代表と一同に会して多様な文化背景を学び、またその人たちとのコミュニケーションを通して多くの刺激を受け、豊かな視点を持った人になりたいと思います。そして、自分でこの世界の舞台でどこまでのことができるのか、大会がとても楽しみです!(青木さん)

 

今までにないほどの規模で、様々なバックグラウンドを持つ人たちが世界中から集まる貴重な機会を最大限に生かせるよう、今回以上にできる準備をした上で、自分たちの力を発揮できるようにしたいと思います。ものすごく大きなチャンスを頂くことができて、ものすごく楽しみです!(鎌田くん)

 

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