全日本高校模擬国連大会2017

他国の意見やその背景にある価値観に配慮しつつ、相違点よりも共通項を探すことに尽力

海城高校Aチーム[東京都]

島村龍伍くん(2年)、山田健人くん(1年)

担当国:メキシコ 

(2017年11月取材)

左から 山田健人くん、島村龍伍くん 写真提供:海城高校

 

1.担当国を希望した理由をお教えください。

 

メキシコ国民の多くが敬虔なキリスト教徒にもかかわらず、多様な性的指向、性自認を認めていること、また議会での女性議員の占める割合が世界でもトップクラスに高いにもかかわらず、社会的には男女の役割観が残存するなど、様々な分野で理想と現実、制度と現状などの乖離がありました。これは、立ち回り方によっては議題に関する二項対立を打破する力を持ち合わせていると考え、メキシコを希望国としました。

 

2.担当国のジェンダー平等に対する姿勢と、国際社会で問題になる(と考えられる)点を教えてください。

 

メキシコはLGBTの人々の人権の尊重を含めたジェンダー平等の達成に向けて法整備等を行い、積極的に取り組みを進めています。一方、連邦制をとっているため、中央政府の方針がそれぞれの州政府の施策に反映されるとは限らず、国民一人ひとりのレベルではジェンダー不平等が残っています。これは女性やLGBTの人々に対する暴力などに表れ、国際社会で問題視されています。

 

3.準備の段階で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

 

議題における細かな用語の運用、論点の把握などが難しく、資料を読み込むのに苦労しました。まず母語の日本語での知識を固めた上で、英語でのリサーチに取り組みました。(島村くん)

 

ジェンダー平等に関して、自分とほとんど接点のない国の立場を考えることはとても大変なことでした。ジェンダー以外の側面からも担当国を捉え、理解を深めるようにしました。(山田くん) 

 

 

 

 

4.大会当日は、どのようなことに気をつけながら会議に臨みましたか。

 

メキシコは観念・価値観の押し付けを好みません。そのため、交渉の際には押し付けがましく意見を言わず、他国の意見、その背景にある価値観に配慮しながら意見を交わすようにしました。立場が異なる国についてもそれは同じで、意見・価値観を全否定することは許されないことを念頭に置き、交渉しました。(島村くん)

 

ジェンダー平等に関する各国の意見は、一つとして同じものはないため、まずは他国の話をよく聞くことを心がけました。その上で、各国の文化を交渉によって平均化することはできないため、意見を最大限尊重するようにしました。これは立場が異なる国と交渉する際にも同じで、文化や慣習を否定しあうために集まったのではないことを意識し、相違点よりも共通項を探すようにしました。(山田くん)

 

5.会議を進める上で一番大変だったことを教えてください。それをどのような工夫や努力で乗り越えましたか。

 

会議始めにあった、西欧諸国と中東・アフリカ諸国の互いへの「アレルギー」を払拭することが最大の課題でした。真摯な姿勢を2日間にわたって続けることで、こちらの「観念を押し付けない」スタンスが偽りのないものと理解していただききました。(島村くん)

 

議論が進むにつれて各グループの中心的なメンバー同士の話し合いが増え、自分のグループの国々にうまく情報が伝わりにくい状況になりました。そこでペアと分担して、自分たちのグループへの説明や、グループ内での議論を十分に行うようにしました。(山田くん)

 

6.皆さん自身はジェンダーの平等についてどのような考えを持っていますか。また、それは担当国の立場とどのような点が同じ(あるいは違う)でしたか。

 

僕は元々様々な社会的な「枠」に疑問を持っていたため、メキシコの「生まれ持った性にとらわれない、一人一人の生き方を尊重する」姿勢は個人的な考えと方向性は一致していました。しかし、その考え方を実社会のどの分野でどう運用するのかという点では、私個人の考えとメキシコのスタンスは完全に一致していなかったため、それについては会議では個人を抑えて行動しました。(島村くん)

 

会議では、生まれつきの性にとらわれることなく、人生のあらゆる場面において自由を有し、自らの望む生き方を選択できるようにすべきだと主張する国が一定数いて、私もそうした意見に共鳴する面はありました。しかし担当国は、性の枠組みを踏まえた上での自由を考えており、自分の意見と担当国の立場はしっかりと区別して行動するようにしました。(山田くん)

 

7.世界大会に向けての抱負を教えてください。

 

模擬国連を始めて1年。自分の内面も、自分を取りまく環境も大きく変わりました。一部は僕自身の行動による変化でしたが、大部分は他人に助けられて生まれたものでした。世界大会へ険しい道のりが続くと思いますが、その過程でも他者への感謝を忘れることなく、自分の全力を尽くし、悔いのないよう頑張りたいと思います。(島村くん)

 

私にとって模擬国連とは、見えない理想にむかって進み続けることでした。これは、会議における他国との話し合いの中で世界の理想に近づくということだけではなく、自分を見つめ、そして鍛え抜くということでもあります。世界大会でも目指すべき事は同じだと思います。全力を尽くします。(山田くん)

 

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