(2017年4月掲載)
高校生が地域の資源を活用し、地元の企業の人たちの協力を受けながら商品開発を行う試みが、全国の様々な地域で行われています。今回みらいぶが取材したのは、一般社団法人i-clubが開催した、「Think Next! i-club Meetup! 2017」で発表した高校生の皆さんです。
◆答えてくれた人 齋藤美空さん、大森妃乃さん、三浦麻衣さん、小野寺瑠香さん(全員2年生)
気仙沼向洋高校のある気仙沼市は、漁業や水産加工業が盛んです。お酒をよく飲む土地柄なので、副産物として酒粕がたくさんできます。酒粕は栄養価が高く、魚を漬け込んだ粕漬けや、魚や野菜と酒粕を煮込んだ『あざら』などの郷土料理があります。しかし、最近は核家族化や食の多様化などで、酒粕の消費量が減っています。
若い人にも好まれるような酒粕を使った食品を開発し、気仙沼の食文化を守りたい! 気仙沼向洋高校産業経済科の生徒たちがチャレンジしました。
■皆さんの活動について教えてください。
私たちの「商品開発」の授業では、地元に古くから伝わる栄養価の高い酒粕を、若い世代の人たちなどにも食べてもらいたい、もっと知ってもらいたいという思いから開発を進め、酒粕をスイーツと組み合わせることにしました。
授業の中では、お菓子屋さんや地元の方々と協力することで、これまで私たちが知らなかった気仙沼の良さや文化などを教わりながら酒粕ミルクスイーツの開発をしてきました。酒粕をスイーツと組み合わせることで、今までにない、新しいものができたのではないかと思います。さらに、この授業では私たちが知らなかったお菓子づくりの裏側や、様々な苦労を知りました。
そこから私たちも期待に添えるように頑張ろうと思い、積極的に授業に取り組み、普段の授業以上のやりがいを感じることができました。
■この活動を始めた経緯を教えてください。
本校では、産業経済科2年生の「商品開発」という1年間を通して学ぶ授業で、この取り組みを行っています。週2時間授業があって、そこでは多くの社会人の方々に来ていただき、講演や商品に対するアドバイス等をいただいています。
現在酒粕を使っている家庭は減ってきています。気仙沼の文化として酒粕があるというのに、実情は寂しいことが授業を通してわかりました。そのため、家庭でまた当たり前のように酒粕を使う未来にしたいという思いから、酒粕が苦手な人でも食べられるようにで酒粕を使った商品開発がはじまりました。
2014年度に私たちの先輩が課外活動で酒粕とミルクジャムを組み合わせることで、酒粕ミルクジャムを開発していました。私たちは、この酒粕ミルクジャムをさらにたくさんの人に食べてもらうために、酒粕ミルクジャムを使ったスイーツ作りに取り組むことにしました。
■今回の商品開発ではどんなことにいちばん苦労しましたか。
いろいろなアイディアがでても、それで本当に気仙沼の魅力を伝えることができるのか。気仙沼の将来につながるものになるのかと何度も試行錯誤しました。そこからさらにお菓子屋さんと連携して意見交換や試作を何度も繰り返し、改善していき、やっと商品が完成しました。こういったことを通して、新しいアイディアを形にして実現させるのは、とても難しいことなのだと学びました。
■今回の活動で、いちばん頑張ったことを教えてください。
活動を振り返ってみて一番頑張ったのは地元のイベント「産業祭り」での販売会です。私はチラシを配る係を担当したのですが、途中から試食を配り、直接酒粕ミルクジャムについて説明しました。最初はうまく話せなかったのですが、徐々に慣れてきて、ミルクジャムのいろいろな調理法やおいしさ、魅力をたくさん伝えることができたと思います。そこからお客さんが商品を手に取ったり、買ってくれたりしたときはとても嬉しかったです。
■皆さんの商品で、ココは工夫した!という点を教えてください。
カステララスクは、生地に酒粕を入れるだけでなく、お菓子の表面にもミルクジャムを塗り、酒粕の香りとラスクのカリカリした食感が楽しめる、今までにはないような商品です。
大福は、気仙沼の海に浮かぶ「浮き球」をイメージして作りました。
さらに、大福の表面にはお菓子屋さん自慢のチーズプリンにミルクジャムを混ぜたものをコーティングしました。大福ならではのモチモチした食感はもちろん、味のバリエーションも豊富で見た目も味も楽しむことができます。どちらの商品もスイーツの良さ、お菓子屋さんの特徴やこだわり、そして気仙沼の魅力を感じられる、お土産などにも適した商品にすることができたと思います。
■今回の活動で、地元について調べたり、地元で活躍する人たちと接する中で、どのようなことを学べたと思いますか。
最初は「気仙沼の良い所って何?」と聞かれても、誰もが答えるような海とか魚とかしか答えられませんでした。でも、この活動を通して気仙沼の自慢できるところや知らなかった文化を学ぶことができ、たくさんの人に気仙沼を知ってもらいたいと思うようになりました。また、この活動をきっかけに、地元のたくさんの方との交流があり、講話で私たちも知らなかった気仙沼の魅力や商品を開発する過程やデザインを考える上でのポイントなど丁寧に教えていただき、以前よりもこのような活動の趣旨や知識が身についたと思います。
■今回の経験は、今後の進学や就職にどのように活かされると思いますか。
今回の活動では、いろいろな形で話す場面が多かったので、人とのコミュニケーションや前に立って発表するなど、前の自分と比べても、少しずつですが自信を持って話せるようになりました。この活動で学んだことは、進学や就職する上でも大切なことであり、受験の時には面接などで活かすことができると思いました。地元以外の場所で商品発売をする機会は今回が初めてでしたが、大人の方々と一緒に活動した中で、商品の勧め方や接客のしかたなどを学ぶことができたので、社会に出る前にこの活動ができたのは、自分たちにとって貴重な経験でした。