(2017年4月掲載)
高校生が地域の資源を活用し、地元の企業の人たちの協力を受けながら商品開発を行う試みが、全国の様々な地域で行われています。今回みらいぶが取材したのは、一般社団法人i-clubが開催した、「Think Next! i-club Meetup! 2017」で発表した高校生の皆さんです。
◆部員数 7人(2年生7人)
◆答えてくれた人 中山紗希さん(2年)、山本悠乃さん(2年)
大成女子高校のある茨城県は、4年連続で47都道府県の魅力度ランキング最下位という、県民にとっては嬉しくない地位に甘んじています。茨城のイメージアップにつながるような新しいモノを作るために、様々な地元の特産品を研究したメンバーがたどりついたのが、蒸したさつまいもを天日で乾燥させた「ほしいも」。
そのままでは地味でぱっとしないほしいもを、朝食用のグラノーラに加工することで、ホテルの朝食バイキングでも大好評のおしゃれな商品に生まれ変わりました。
■皆さんの活動について教えてください。
今回、私たちは「ほしいも」に注目して、商品開発をしました。「ほしいも」を使うにあたって、私たち同世代の若者に「ほしいも」についてインタビューをしました。その際に得た答えは、とても好印象とは言えない、ネガティブなものばかりでした。しかし、私たちは「ほしいも」にも一工夫加えれば、どんな商品と並べても見劣りしない、若い世代にも人気が出る商品になると思いました。「ほしいも」には大きな伸びしろがあります。そして、「ほしいも」に限らず、茨城のどんな食材にも同等の伸びしろはあるはずで、つまり、茨城県の伸びしろは大きいのです。それを知ることで、茨城県民は地元に誇りを持つことができ、県内外の方には茨城県に興味を持っていただける、と思っています。
■どうしてこの活動をはじめたのですか。
活動の原点は先生方が地域デザインというものに興味を持ったことです。この活動は県内初の試みでした。だからこそ、茨城県が何か一番になっているものを使いたい。そう考え、茨城県が全国生産量の約9割を誇り、1位である「ほしいも」を使って商品開発をすることになりました。私たち生徒は、各々の目的を持ってこの活動に参加しました。「おもしろそう」「将来何かの役に立つかも」「受験で有利かも」「先生に言われたから」など、茨城のために参加したいと思う人は少なかったと思います。しかし、活動を続けていくうちに、普通の高校生である私たちが、商品を開発できることを徐々に楽しみにするようになりました。お店に開発した商品が並ぶことを期待しながら、活動を続けてきました。
■今回の商品開発にかかった時間はどのくらいですか。
平成26年4月~2年間。週1日、1日3時間活動しました。
■今回の商品開発ではどんなことにいちばん苦労しましたか。
先生との意見の食い違いがあったことです。最後の発表の前に、私たち生徒が考えていた目標と先生方が考えていた目標にずれがあることを気づきました。活動の中頃から、自分たちの作りたい未来が部員全員混乱していたこともあり、目標が全く分からなくなっていたので、先生方との議論を活動時間を延長して行いました。全員が真剣に考え、目標をまとめようとしました。その中で、言い方が強くなってしまったり、苛立ってしまうこともありました。しかし、長く辛い議論をした分、全員の活動に対する思いが深まり、目標も1つに決まりました。部員間の互いの理解も一層深まったと思います。私はこの議論で友人の知らない一面を多く見ることができました。尊敬と親しみの思いが大きくなると同時に、個人的な向上心も大きくなりました。辛かったこの経験を大切に、自分の宝としていきたいです。
■今回の活動で、自分がいちばん頑張ったことを教えてください。
話し合いです。(山本さん)
人の気持ちを考えることです。私は部長という役割をいただいていながら、まとめること、指揮を取ることは苦手でした。だからこそ、部活内で揉め事が少しでも起きないように尽くそうと思っていました。しかし、それもまた難しいことでした。はじめは自分も一緒になって揉め事を起こしてしまったりしました。余計に部活に行きたくなくなったり、周りも不平ばかりになってしまいました。何が大事なのか考えていくなかで、人の気持ちをよく考えていなかったことに気づきました。それからは、大きな問題もなく発表の日を迎えることができました。当たり前のようなことがとても大事なのだと気づかされました。(中山さん)
■皆さんの商品には、どんな工夫がありますか。
「ほしいもグラノーラ」には、「リンゴ味」と「味噌(みそ)味」の2種類の味があります。リンゴ味は、リンゴの酸味とほしいもの甘味が調度よく合わさって、いくらでも食べたくなる商品です。そして「味噌味」は、甘いものが苦手な方にも食べていただきたいという思いからできたアイデアです。「味噌味」は、ヨーグルトや牛乳と合わせてももちろん美味しいのですが、おかゆや豆腐と合わせて食べていただくと一層美味しく召し上がることができます。さらに2つのグラノーラはどちらも完全無添加で安全です。
■今回の活動で、地元について調べたり、地元で活躍する人たちと接したりする中で、どのようなことを学べたと思いますか。
活動を終えた今、茨城県は多くの機能を持ち、それをもっと生かしていける、まさに伸びしろの大きい県であると感じました。
私がそう思うようになったのは本当に最近です。調べてみると良いことばかりの茨城県です。ほしいも農家の方からは「茨城県だからこそ、おいしいほしいもが作れる」と教えていただきました。
他にも、たくさんの野菜がとれること、広い土地があることなど、私たちが生活している中でも、茨城県の良さを多く見つけることができました。一方で、ではなぜ他県からの印象は薄く、地元の人が誇りを持つことができないのか、とも活動中にも考えていました。しかし、商品を実際に見てみると、私も思っていた「ほしいも」に対するネガティブなイメージが良い方向へ変わりました。このことから、茨城には誰も想像がつかないような伸び代があるのだと認識することができました。
■今回の経験は、今後の進学や就職にどのように活かされると思いますか。
多くの方とコミュニケーションをすることに活かせると思います。商品開発をするにあたり、発表の場は1つや2つではありませんでした。その中で、実際に社会で働く大人の方や同じく商品開発をする他の地域の高校生など、広い世代と交流をしてきました。
私たちの中には、最初はコミュニケーションを苦手とする生徒も多くいました。じつは、私もその一人です。でも、上手くコミュニケーションをとるための方法を考える中で「笑顔」で接することが大切であることに気づきました。「笑顔」は気持ちを伝えるための、最も良い方法です。最後の発表の際は全員が「笑顔」で気持ちを伝えました。私たちの「食べてほしい!」「知ってほしい!」が伝わったと思います。私たちが身につけた「笑顔」は「活かせる!」というよりも「活かしていきたい!」ものです。