第10回全日本高校模擬国連大会

日本の高校模擬国連は世界最高水準のレベル。目的意識を持って参加してほしい

会議監督 神保真宏さん(東京大学経済学部3年)

(2016年11月取材)

模擬国連の会議運営や会議監督、議題の策定、議題解説書の作成などは、模擬国連のOB・OGや大学で模擬国連に取り組む大学生が行っています。今回の会議監督を担当した神保さん(東京大)にお話を聞きました。 

 

「サイバーセキュリティ」を今回の議題として選ばれた経緯や意図をお教えください。

 

模擬国連の活動の中で、米国の国防総省が「『サイバー空間』を陸・海・空・宇宙空間に次ぐ『第五の戦場』である」と表明していることを知り、サイバー空間に興味を持ったのがきっかけです。サイバー空間は国際的に重要性を高めているにも関わらず、日本においてはその重要性をあまり認識できていないという事実に直面し、衝撃を受け、未来を担う優秀な高校生に議論させるには、教育的意義という観点においても、国際的に関心が高い話題という観点においてもこれ以上のものはないと考えました。

 

全日本大会の出場者に、この議題を通してどのような議論をしてほしいと考えられましたか。

 

緊急性の高い、最先端の国際問題における複雑な対立構造について身をもって体感してもらい、サイバー空間における問題について高校生らしい視座で柔軟に解決への糸口を見出してもらうことを期待していました。

 

今回の議題は、これまでと比べてどのような点が難しかったと思いますか。

 

国同士の対立の構造が、これまでの全日本大会で取り上げた議題(核軍縮、児童労働、食糧安全保障、移民問題など)に比べて捉えにくいという点。また、高校生が「国際問題」として意識したことのないもので、高校の教育現場でも触れる機会がほとんどないという点でも、高校生には捉えにくい議題だったのではないかと思います。

 

2つの会議から提出された決議案をご覧になった感想をお教えください。

 

双方とも従来の会議の成果文書からの変化は少ないように思いました。これに関しては議論の時間等もありますし、悪いこととは思いません。しかし、議場Aで大幅に波乱を呼ぶような文言がないにも関わらず、全会一致による採決ができなかったのが驚きでした。

 

出場者が優れていたと思う点、不足していたと思われる点をお教えください。

 

「国際的なルール作り」がメインテーマでしたので、議場全体として全会一致(コンセンサス)に向けた動きがあったのは非常に良かったと思います。ただ、主導権を握ろうとする大使が多すぎるのに加え、意外と誰も議場全体の流れを把握し、議場全体をどう導けば良いのか考えるという視点が欠けていたため、議論の効率性というのは若干低かったのかなと思っています。

 

今後模擬国連に出場しようと思っている高校生にメッセージをお願いいたします。

 

模擬国連というのは、ただがむしゃらに打ち込んでいるだけではあまり得られるものがない活動のように思います。模擬国連を通してどんな能力を涵養したいのか、何を得たいのか、目的意識を強く持って取り組むと良いと思います。来年度の全日本高校模擬国連大会へのご応募を検討されている皆さんには、掛け値なしに世界最高水準の会議を提供できるよう努力してまいりますので、皆さんも全力で挑んでください。

 

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