東京都立西高校で、フォトグラファー飯富崇生さんとジャーナリスト芦刈いづみさんの講演会を企画・実行したのは、「みらいぶ」の連載でもおなじみの西高4年生・新造真人くん。彼はなぜ、この講演会を開こうと思ったのか。その理由を聞きました。
僕は、「りんご会」という組織を結成し、講演会などを企画・実行しています。第1回の講演会開催は昨年2013年のこと。元アップル・ジャパン社長の山元賢治さんにお越しいただきました。
きっかけは、僕が楽しみにしていた山元さんの講演に間に合わなかったことです。どうしても外せない用事を終えて会場まで行ったのですが、プレゼンは終わってしまっていました。その会場に残っている熱気、観客の瞳のきらめき、そしてみんなが口々に言う「すごい」という言葉に、間に合わなかったことをとても後悔しました。
どれだけ充実した内容だったのだろう。気になって、その日のうちに山元さんの著書を買って読み、どんなプレゼンをしたのか想像をして、その夜に山元さんにメールを送ったのです。どうしても山元さんの講演を聴いてみたくて、「西高で講演をお願いします」と依頼しました。
山元さんは200人集められるのなら講演をやってもいいと言ってくれました。とにかく必死で200人を集めて講演会は実現。その楽しさ、充実感が忘れられず、来年も講演会を続けようと思ったのです。
二つ目の、講演会を開いた理由。
僕は1年間留学したので、現在高校4年生です。留学準備中の僕を残して、周りの同級生たちは受験勉強の真っ最中。とにかく超勉強しているわけです。以前は全然勉強していなかったヤツも勉強している。それを僕は、かっこいいなと思った。応援したいなと思いました。
ただし、応援するにしても、一言メールなんかではつまらない。何か心に染み渡るような、ストーリーをもって応援する気持ちを伝えたいと思いました。
12月に高校でりんご会を開催する前に、社会人向けに開催された山元さんの講演会に出席しました。プレゼンの内容は「未来って楽しいかもしれない」と思えるようなものでした。「そうだ、未来が楽しいと思えれば、苦しい受験の時期も乗り切れる」。僕は講演を受験勉強をがんばっている友人たちへの応援にしようと思いました。その思いは変わらず、今年も第2回りんご会を企画することに決めたのです。
そして、最後の理由は、西高という学校への思いです。
西高って、都立高校のなかでもちょっと変わっているかもしれません。「西高って特別かも? 西高って変かも?」って思って入学した人もいるくらいです。僕もそう思って入学し、周りは頭がよく話が面白く、やっぱり西高って面白いと思っていました。
ところがだんだん、西高って普通かも‥‥という気持ちになってきました。面白いってどういうこと? 2年生の頃にはすっかり、西高なんて平凡だ、なんてつまらない学校だという認識に変わりました。
けれども、3年生になってまわりが超勉強し始めると、「なんであいつがこんなに勉強するんだ」と疑問を持ちました。みるみる成績をあげていく彼らをみていると可能性を感じ、そして「彼らは、この学校は変わってるな」とまた思い始めました。
そして、その「こいつら変」「西高って変」という気持ちを入学してから3年間持ち続けることができたらどうなるかを想像しました。3年間、西高のことを、自分自身のことを「超変」だと思い続けられれば、その人は「超特別」になれるし「超最強」になれるんじゃないかなと。例えば、新しく入ってきた新入生が「この学校、超変」と思い、その気持ちを卒業まで3年間持ち続ける。学校を先導する最高学年になったとき、西高は自他ともに認められた変でいられます。そうすれば、次からの入学生も変にならざる得ない。
だから、僕は新入生たちが西高を変だと思い続けられるように、変なこと、面白そうなことをいろいろ試してみました。友達と顔を真っ赤に塗ってガチャピンとムックの変装をし、新入生歓迎会の邪魔をしました。図らずも人気者になり(!) 、周りの部活からは邪魔者扱いされました (笑) 。1年生とサークルを立ち上げたり、東北支援をやってみたり。行動することによって「変」を表面化、視覚化しようと考えたのです。
その集大成が、りんご会です。講演会です。西高では、こんなに面白い人を呼んだ立派な講演会も、生徒が勝手に企画するんです。りんご会で僕は「自分を変って、信じ続けてみて」というメッセージを送りたいと思っています。
<新造くんが実施した講演会でのお話しはこちら>
世界に飛び出そう! ロサンゼルスで活躍する日本人からのメッセージ
フォトグラファー飯富崇生さん
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