従来の太陽観測機材を改良、誰でも簡単に安全な太陽観測ができる!
【地学】茨城県立土浦第三高等学校 科学部
(2015年7月取材)
◆部員数 13人(うち1年9人、2年4人)
◆書いてくれた人 山内翔太くん(2年)
■発表内容 「New
Type 太陽観測装置の開発」
太陽観測には一般的に太陽投影板を用いますが、この方法では太陽の像を観察する際、接眼レンズの近くでは、枯れ草を燃やしてしまうほどの強い太陽光が撮影者に当たってしまうため、危険です。これを防ぐために金属フィルタを用いる方法もありますが、その場合は同時に一人しか観測できないという欠点があります。
そこで私達は、この二つの欠点を同時に解消すべく、新たな太陽像投影装置を作成しました。
仮説として、長焦点反射鏡の光軸付近に平面鏡を置いて、太陽像をスクリーンに投影すればきれいな太陽像を投影できるのではないかと考えました。また、反射光は太陽光よりも弱いため、万一直視してしまっても、目を傷める危険性は小さくなると考えました。
この二つの仮説から、誰でも簡単に持ち運べて扱える装置を開発しました。
まずは、装置の仕組みについて説明します。光路図は以下の通りです。太陽の光を主鏡に入れて反射させ、副鏡でもう一度反射させてスクリーンに投影します。このように、2枚の鏡を用いて光を反射させ、スクリーンに投影するという仕組みになります。
主鏡は凹面鏡で、直径は150mm、焦点距離は20m、厚さは25mmです。副鏡は平面鏡で、直径は150mm、厚さは25mmです。どちらもパイレックスという素材を用いています。パイレックスは普通の鏡に比べ熱に強く、温度変化によって形が変化しないため、像を安定して作れます。
これらの鏡をやさしく固定するために用いたのが、セルと呼ばれる部品です。これは、12mmの厚さの板をドーナツ状にくりぬいて、それを二枚重ねて接着したものです。内側にはフェルトが貼ってあります。
これらと、フォークや連結フレームを組み合わせると、写真のようになります。
スクリーンは、発泡スチロールのボードで製作しました。以前は木製のスクリーンを使用していたのですが、持ち運びに適していないことがわかり、発泡スチロールで製作しました。また、昇降装置を搭載することで、地上2.5mの高さまでの伸縮も可能になりました。
使い方は、まず主鏡の位置を合わせ、その反射光を副鏡に導入します。次に、副鏡の反射光をスクリーンに映します。最後に、スクリーンを前後してピントを合わせることで、像を写すことができます。
実際に使ってみた結果、太陽像をきれいに投影することができ、黒点や周辺減光なども観察することができました。
さらに、長焦点の主鏡を使用していることから、スクリーンを斜めにしても端から端まで像のピントが合います。このことにより、いろいろな位置にいる観測者にスクリーンを向けることができます。その結果、40人程度の大人数でも太陽観測ができるようになりました。
スクリーンを昇降させることができるため、太陽光が観測者の目に直接入る危険性も小さくすることができます。また、実際に直射日光とスクリーンに当たる光の照度を比べてみても、約4分の1に抑えられています。
<考察>
NewType太陽観測装置の利点としては、装置・スクリーンともに軽く、持ち運びが容易で誰でも簡単に太陽観測が可能です。また、焦点距離が20mと長いことから、屋外に装置を設置して観測者は空調の利いた屋内で観測することも可能です。加えて、前述のように安全に大人数が観測できる、とても画期的な装置であると言えます。
一方、欠点としては、焦点距離が長いことから、20m程度のスペースが必要になってしまいます。また、装置自体は太陽を追尾するのですが、スクリーンは動かないため、時間が経過すると太陽像が少しずつ動いてしまい、スクリーンから出てしまうことも考えられます。
今後は、太陽像が動かないように、副鏡の可動部にモーターを組み込みたいと考えています。しかし、それによって装置が重くなったり、複雑になったりしないようにしたいと思います。
また、装置を用いて黒点等の継続観察を行いたいと考えています。
■研究を始めた理由・経緯は?
2学年上の先輩方がこの研究を始めていたのですが、さらに性能を上げるべく、我々が引き継ぎました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
2012年から今までです。
■今回の研究で苦労したことは?
装置を使って投影する際に、天候によって投影できないことがあったことです。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
反射型の投影装置で映した太陽像の鮮明さを見てください!
■次はどのようなことを目指していきますか?
今回は反射型の投影装置でしたが、屈折型の投影装置も製作したので、アメリカでの販売のためにもっと追究していきたいです。
■ふだんの活動では何をしていますか?
我々科学部は3つの版に分かれて、私達は地学班に所属しています。生物班は主にゴキブリ、物理班は振り子を研究しています。
■総文祭に参加して
自分達の番を待っている時は緊張で頭がいっぱいでした。いざ発表が始まると、緊張もだんだんとけてふだん通りの発表ができました。結果は奨励賞と、あともう少しのところで最優秀賞だったので、次回の総文祭では最優秀賞を獲りたいです。
※土浦第三高校の発表は、地学部門の奨励賞を受賞しました。