秋の「七草」が秋の「五草」に!? 野生のキキョウを絶滅から救え!
【生物/ポスター部門】福岡県立筑紫丘高等学校 生物部
(2015年7月取材)
◆部員数 6人(うち1年生4人・2年生1人・3年生1人)
◆書いてくれた人 須田紫野さん(3年)
■研究内容「キキョウ存亡の秋(とき)!」
万葉集の昔から秋の七草に数えられ、日本の秋の花として親しまれてきたキキョウ。
しかし、キキョウは同じく七草の一つであるフジバカマとともに、100年後の絶滅確率が99%と言われています。
「秋の七草」が「秋の五草」になってしまわないためにはどうしたらよいのか。古事、「危急存亡の秋」から「キキョウ存亡の秋」と名付け、調査と実験を行いました。
1.栽培個体の開花数調査
地元の大野城市トラストの森で採取した種子を発芽させ、鉢植え栽培して、2007、2008、2009年の発芽年別に10個体ずつを用いて開花数を記録しました。
その結果、開花は7月下旬から9月上旬に多いことがわかり、個体あたりの平均開花数は22.2個でした。
2.発芽実験
キキョウの種子がどのような条件で効率よく発芽するのか調べるために、発芽実験を実施しました。
まず「光の色による発芽率の差」の実験です。蓋付き容器に野生種、園芸種の種を蒔いたシャーレを入れ、容器ごとにセロファン(透明、赤、青、緑)、黒画用紙で覆いました。
野生種の場合、暗条件ではあまり発芽せず、赤色光でもっとも多く発芽しました。このことからキキョウは光発芽種子であり、赤色光は発芽を促進することがわかりました。
園芸種の場合、青色光で発芽が抑制されたものの、暗条件、明条件とも発芽率はほとんど変わりませんでした。
これらから、園芸種は発芽するよう処理されているのではないかと考えました。
次に「ジベレリン添加による発芽率の差」を調べました。ジベレリンは発芽促進などに関わるとされている植物ホルモンです。方法1として、シベレリン0(蒸留水)、12.5、25、50ppmと条件を変えた種子を恒温器に入れ発芽を調査。ジベレリンを入れると発芽率が上がることから、ジベレリンに発芽促進効果があることが確認できました。
方法2として、ジベレリン25ppmに2日間浸したあと、0cm、0.5cm、1cmの深さで播種しました。
ジベレリンは2日間の浸漬で効果があり、深さ0cmの場合が、発芽率82%と最も効果的ということがわかりました。
3.自生地調査(福岡県大野城市トラストの森)
最後に2011年から実施している自生地調査についてです。トラストの森の、キキョウが自生する5つの地点で、右に示す方法で2011年と2014年に調査を行い、その結果をまとめました。
上の写真は林冠(森林において、太陽光線を直接に受ける高木の枝葉が茂る部分)の様子、右のメッシュ図が林床(森林の地表面)の状態を図示したものです。林床の図では、色によって草木の高さを表しています。
キキョウは周りの植物高が低い場所に生育します。そして、林冠が閉じた状態になると開花せず(地点1、地点3)、林冠が開くと開花数が増加します(地点4)。また、花数の平均は個体あたり2.3〜2.5個で、栽培個体の22.2個に比べかなり少ないことから、自生地では発芽・成長のための光が不足していると考えられます。
これらの実験・調査の結果から、絶滅危惧種のキキョウを守るためには、
・光種子であることやジベレリンが効果的であることに着目し、種子を発芽させ栽培によって個体を増やすことと、
・周辺樹木の伐採や草刈りなど適度に人の手を加え、自生地の光条件をよくする
という2つのことが必要であることがわかりました。
■研究を始めた理由・経緯は?
家に咲いていたかわいいキキョウが野生では絶滅しそうだと知り、守りたいと思ったからです。中学生の時に夏休みの自由研究としてスタートした個人研究です。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
私が中1のとき(2010年)から始めました。1日あたり約3時間で6か月(春~夏)、野外調査は不定期的で、毎回半日くらいかかりました。
■今回の研究で苦労したことは?
1日も欠かせない継続観察とデータまとめに苦労しました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
実験器具がとにかく何もなかったので、自分で用意できる身近なもので代用したところです。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?
「キキョウ種子の発芽性」木本氏幹、鈴木善弘(福島大学学芸学部)
■次はどのようなことを目指していきますか?
今回のテーマを続けていき、実際に野外でどうなるか実験区を作って試したいです。でも、違うテーマの研究もいっぱいしたいな~(笑)。
■ふだんの活動では何をしていますか?
アルテミア(※)の実験や生き物の飼育、海岸採集などをしています。文化祭、体験入学の準備もがんばっています。
(※アルテミアは、ブラインシュリンプとも呼ばれる、体長1センチほどの節足動物です)
■総文祭に参加して
総文祭、めちゃくちゃ楽しかったです!!理科の楽しさを改めて感じました。ほんとに行けてよかった!友だちも増えた!忘れられない最高の思い出です。