斜面崩壊のモデルを砂山でシミュレーション。日本だけでなく、海外でも火星でも使えるモデルを活用して、災害の被害を最小限に!
【地学/ポスター部門】宮城県仙台第二高等学校 化学部
(2015年7月取材)
◆部員数 26人(うち1年生8人・2年生8人・3年生10人)
■研究内容「砂山シミュレーション」
斜面崩壊の発生原因には、雨や雪などが大量に浸透すること、人為的要因(道路建設などの斜面下部の切り取りや樹木伐採等)や地震動など多くの要素があります。その中でも地震による被害について、斜面を含んだ山の裾野の形に着目し、崩れ方を斜面角度から予測し、地図形式「スフラマップ」(SFL Map=Slope Failure Landscape Map)でまとめました。
・砂山の形成には、斜面角度と高さの関係として「内接円法則」を発見しました。
・スフラマップの活用例として、土砂崩れ発生時の避難経路の設置ルートや土地開発の進
め方といった災害予測を提案しました。
・砂山の精度判定としては、3D判定で数値的に検証、内接円法則を用いて、尾根線とボロ
ノイ図(※)関係性を示しました。
※ボロノイ図: 空間上の任意の点と同じ空間に配置された母点との距離関係で作図される
■研究を始めた理由・経緯は?
2011年3月11日、私の住む東北地区を東日本大震災が襲いました。研究を始めたきっかけは、被害を目の当たりにしたことです。地震による土砂崩れで建物は崩壊し、道路は遮断され、死者も出ました。災害対策はとても重要な事であると実感しました。土砂崩れの危険が考えられる場所を把握し、対策することができれば、土砂崩れによる被害を最小限化できると考え、この研究を始めました。
■今回の研究にかかった時間はどのくらい?
1日あたり多い時で7時間くらい、少ない時で2時間くらいで、1年この研究をしました。
■今回の研究で苦労したことは?
砂をふるいにかけて大きさをそろえ、砂山を作り計測し、崩しては計測し、画像を撮る、計算するという同じ作業を何回も地道にすることは大変でした(風などのちょっとした衝撃で砂山の実験データが変わらないように気を配りながら)。また、カメラで画像を真上から写すことにも苦労しました。
■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?
日本だけでなく、海外や火星まで実験したことです。
■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?
・USGS ladslide information
・The topography of steady sandpiles on arbitrary domains、
VISUALIZING TERRAIN MODELS FROM CONTOURS – PLAUSIBLE RIDGE, VALLEY AND SLOPE ESTIMATION、
・「ボロノイ線図による隣接関係を用いた等高線の抽出」水谷宣夫(電子情報通信学会論文誌 D-2 情報・システム 74(11), p1499-1506, 1991-11 )
などの文献です。
■次はどのようなことを目指していきますか?
今後、本研究を社会的に生かすためにも、結果を出して終わりとするのではなく、今回の活用例の他にも具体的に示したいと考えています。たとえば、将来的な人類移住計画や基地建設を見据えて月、火星での本研究の活用の可能性を示したいと考えています。将来的には、火星以外の惑星での実験や地球表面の山に限定することなく、海底都市や資源の開発の際の海嶺といった場所での斜面崩壊の予測も行っていきたいと思います。
違うテーマで研究をするとした場合も、役に立つ研究であることが前提にあります。医学分野の研究に興味があります。専門的な研究室で研究をしてみたいです。
■ふだんの活動では何をしていますか?
高校の化学部の部室で研究をしています。それにプラスして、昨年一年間は、東北大学の「科学者の卵養成講座」で、月に1回くらいですが、いろいろな分野の研究を学んでいました。
■総文祭に参加して
私は、自然科学部門においてポスター発表を行いました。ポスター発表の場合には、予めポスターを作成し、当日審査員に対してプレゼンを行い、質疑応答などで審査が行われます。発表者が一方的に話すということではなく、各回5人ほどの審査員とのディスカッションを行っていくと考えるとわかりやすいと思います。口頭発表に比べて、ポスターや実際に使った実験器具を前にして審査員から多くの質疑を受ける分だけ、より詳細に内容を見てもらえました。これからの研究に生かすべきことも学べました。
また、総文祭には各県の代表が集まるので、自分の地域の大会では知り合うことのない人との出会いがあり、自分の研究を多くの人に知ってもらうよい機会であるのと同時にお互いの研究に対する感想やアドバイスをし合うことができる場でもあります。とても有意義な時間を過ごすことができました。こういった場は貴重で、発表をしているなかで新たな自分の研究のビジョンが見つけられることはよくあります。今回もたくさん見つけられました。この時間を大切にしています。
部活やサークルといったまとまった人数で研究しているチームも多いので、継続的に同じテーマで研究し続けているものもありました。総文祭ならではだと思いました。継続研究は、研究者が変わることで視点も変わり、同じテーマで続けることの面白さを感じました。ぜひとも機会のある人は総文祭に挑戦してみてください。
※仙台第二高校の研究は、ポスター発表部門で文部大臣賞を受賞しました。