遺伝子組換え作物の分布の実態と環境への影響を調べる 

【生物】宮城県仙台第一高等学校 生物部

(2015年7月取材)

仙台第一高校生物部のみなさん
仙台第一高校生物部のみなさん

◆部員数 8人(うち1年生2人・2年生3人・3年生3人)
◆記入者 諏訪部椋大くん(3年)

 

■研究内容「自生する遺伝子組換え作物の実態」

遺伝子組換え作物(Genetically Modified Organisms)の影響として生態系への侵略や人体への健康被害への可能性などがあります。仙台港周辺では遺伝子組換えナタネ(GMナタネ)が確認されています。

そこに問題意識を抱いた私たちは、仙台港周辺と石巻港周辺をはじめとする宮城県内の様々な場所で、遺伝子組換えナタネの分布を調査しました。

 

遺伝子組換えナタネの確認には、PCR法(※1)を用いた遺伝子分析と、検査紙によるストリップテスト(タンパク質の分析)を用いました。

※1 Polymerase Chain Reaction[ポリメラーゼ連鎖反応]DNA断片を大量に増幅させる反応。DNA断片の必要な部分のみを増幅でき、微量なDNAでも実験に利用できる

 

電気泳動の装置
電気泳動の装置

PCR法では、セイヨウナタネの葉から、遺伝子組換えをしたものに特有の遺伝子(特定の DNA断片)を増幅し、それを電気泳動法という、DNA断片を大きさごとに分離させることで、遺伝子の有無を確認しました。

 

目的の大きさの遺伝子が検出されれば遺伝子組換え、検出されなければ遺伝子組換えでないことになります。結果は、遺伝子の存在を確認しました。

確認された遺伝子の種類
確認された遺伝子の種類
検出結果
検出結果

ストリップテストの様子
ストリップテストの様子

検査紙によるストリップテストでは、遺伝子組換えナタネが含んでいるタンパク質の有無を確認しました。

 

分析の結果がこちらです。

仙台港周辺の個体は、全て遺伝子組換え(GM)であることが確認され、国道139号線沿いの個体はすべて遺伝子組換えでないと確認されました。

 

石巻港周辺やそこから少し離れた地点においても、遺伝子組換えナタネが発見されました。

 

考察として、仙台港周辺や石巻港の陸揚げ地点周辺の遺伝子組換えナタネは、種の搬入の際に溢れたものであると考えられます。石巻港周辺で、CP4の遺伝子が検出されたのにCP4のタンパク質が検出されなかったのは、なんらかの原因で遺伝子の発現が抑制され、遺伝子産物であるタンパク質が合成されなかったと考えられます。また、様々な場所で遺伝子組換えナタネが見られるのは、津波で拡散された種が原因だと考えられます。


高校生による高校生のための分子生物学講座の様子
高校生による高校生のための分子生物学講座の様子

研究以外にも、私たちは高校生による高校生のための分子生物学の講座を行っています。手動PCRを実際にして、油かすや家畜の飼料などの遺伝子分析を通じて、遺伝子組換え作物を身近に感じてもらうようにしています。それを通じて遺伝子組換えについて詳しく考えてもらい、科学的リテラシーを持ってもらうことが目的です。

これからの研究の指針として、ストリップテストにおいて微陽性(陽性ほどはっきり結果が出ないが、反応はある)を示した、遺伝子組換えナタネとカラシナの交雑種と思われる個体群を見つけました。今後は、その交雑種の分布と遺伝子解析を進めていきたいと思っています。

 

■今回の研究にかかった時間はどのくらい?

研究が始まったのは4年前で、僕は1年と少しやっています。

■今回の研究で苦労したことは?

遠出してひたすらセイヨウナタネの葉を採取したり、連日遅くまで学校に残りDNAを抽出したりするのは大変な作業でした。


■「ココは工夫した!」「ココを見てほしい」という点は?

遺伝子組換えナタネは交雑を起こさないように操作されていることがありますが、この研究は、交雑を示唆しています。

■今回の研究にあたって、参考にした本や先行研究は?

農林水産省「遺伝子組換え植物実態調査結果」(平成21~23年度)
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/nouan/130423.html

独立行政法人 国立環境研究所「平成24年度遺伝子組換え生物による影響監視調査」
http://www.bch.biodic.go.jp/download/natane/H25.5.7.natanehokokusho.pdf

■ふだんの活動では何をしていますか?

ふだんはメダカの飼育をしています。また、他の部員は別の研究(イネ、ゲンジボタル、ミズクラゲの研究など)を行っています。

■総文祭に参加して

今までで一番はっきりと話せたのではないでしょうか。最後の発表が成功に終わってよかったです。研究発表が終わって肩の荷が降りたように感じましたが、また同時に高校生活の終わりを感じました。


先輩からこの研究を受け継いだときから、なかなか苦しい思いをしてきましたが、今では、この研究が多くのことを自分に教えてくれたことがわかります。この研究に携わっていなければ、スライドの作り方も、人前での話し方もよくわからなかったでしょう。日々努力することの大切さも知らなかったでしょう。この研究に関わって過ごした時間はかけがえのないものです。いままでの経験を糧として生きていこうと思います。


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