高校ジャグリング大会の優勝校「筑駒Jugglers」、国立劇場の舞台に立つ
練習は裏切らない。コツも練習方法も自分でつかめ!
(2015年10月取材)
ジャグリングって知っていますか。いちばん身近なのがお手玉や座布団回しなどですが、本格的なショーになると、無数のボールやクラブ(こん棒)などを華麗に操ったり、何人ものチームで大きく投げ合ったり。ナイフやトーチ(たいまつ)を使うスリリングなものもあります。
このジャグリングで総文祭優秀校の国立劇場公演のオープニングを飾ったのが、筑波大学駒場高校・中学校[東京都世田谷区]のジャグリング同好会、「筑駒Jugglers」。全国有数の進学校として知られる「筑駒」ですが、2014年度の日本高校生ジャグリング大会団体部門優勝の実力校でもあります。同好会は創立21年を数え、学校の文化祭だけでなく地域のお祭りや幼稚園の訪問など、いろいろなイベントでも公演を行っています。
筑駒Jugglersの皆さんの華麗な演技はこちらで↓
ジャグリングの魅力や、その練習方法を聞いてきました。(2015年10月16日)
私達が行った時は、15人くらいのメンバーの皆さんが、高校と中学の校舎の間にあるピロティ(吹き抜けの渡り廊下)で思い思いの練習をしていました。練習時間は、授業後の15時から18時頃まで。練習日も週3回の人もいれば、1回だけという人もいて、個人のペースに任されているそうです。
筑駒Jugglersは、自治会の区分では一応文化部だそうですが、体の動きの敏捷さやダイナミックさは、どう見てもスポーツ?! とは言っても、運動系の部活のように、号令をかけながら一斉に動いたり、ストレッチや体幹のような基礎練習でウォームアップをしたり、といった段取りを踏んでいるわけではありません。来たとたんにいきなり大技を連続で決める人もいれば、脇目もふらず同じ技を何回も繰り返している人がいたりと、とても自由な雰囲気です。でも、ダラダラ時間をつぶしている人は皆無で、一人ひとりが自分のペースで何らかの練習に取り組んでいます。
■道具選びは相性。あとは、とにかく練習した者勝ち
代表の村田啓人くん(高校2年)に聞きました
――いろいろな道具がありますが、取り組む道具は、どのように決めていくのですか。
練習場所が中学校の靴箱から見えるところにあるので、新入生が入って来る時期には体験コーナーを作って、自由にいろいろ触ってみてもらっています。その中で気に入ったものを究めていく、という感じです。どの道具が向いているかは、体格や性格にはほとんど関係がなくて、相性ですね。最近の新入生にはディアボロ(中国ゴマ)が人気です。
――新しい技はどんなふうに身につけていくのですか。
新入生の体験コーナーでは、中1の子に中3くらいの子が教えています。どの道具にも基本になる技がいくつかあって、そこまでは教えてもらえばできるようになります。そのあとはYouTubeの動画を見たり、基本の技を組み合わせたりして自分で工夫していきます。
日本は最近ジャグリング人口が増えてきて、レベルが上がってきています。それでもパフォーマンスとしてはまだ日が浅いので、決まったセオリーとか教え方があるわけではないんですよ。だから、練習は自分でやり方や目標を決めてやっています。上達するには、とにかく練習した者勝ちですね。
――筑駒Jugglersで「一人前」と見なされるためには、どれくらいできるようになったらいいのですか。
先ほど言った基本的な技は、個人差はありますが、コツコツやれば中3くらいになれば一通りできるようになります。ボールで言えば3個以上が操れるようになるくらいですね。先輩には、9個操った人もいました。
ただ、単に数を増やせばいいというわけではなく、少ない個数で難しい技を工夫する、という方向性もあります。そして、技の難度だけではなくパフォーマンスとしてどう見せるか、お客さんをどうひきつけるか、ということも重要になってきます。
――舞台のパフォーマンスはどのように作るのですか。国立劇場の公演をどのように作ったかも教えてください。
ふだんの公演では、個人や数人のチームがそれぞれ3分くらいの曲を使って演技します。5~9人くらいで1ステージ30分ほどですね。文化祭では、1日5回ステージをやります。筑駒Jugglersの得意技は、たくさんのクラブを使った大きなクラブパスで、これは必ず入れます。文化祭では高校生がトーチパスもやりますよ。
総文祭の出演の話があったのは5月頃で、その時はふだんの文化祭などと同じような構成を考えていました。7月の終業式の日に、国立劇場の演出の方が来られて演技を見てもらった時、「一人ひとりよりも、皆でやっている感じが出た方が舞台映えがするよ」と言われて、構成を組み直し、1つの曲の中で中1から高2までの10人が、入れ代わり立ち代わりいろいろなことをする、という形に変えました。夏休みはずっとその練習をしていました。
――数学者のピーター・フランクルさんがジャグリングの名手ですし、皆さんも理系が強い人が多いと思いますが、数学とジャグリングは何か関係があるのでしょうか。
僕自身は、特に数学との関係は特に意識したことはありません。数学ができればジャグリングもできるというものではないと思います。ただ、ジャグリングの動きのパターンを数字で表現する「サイトスワップ」という世界共通の方法(※)があって、例えば、ボールであれば3つのボールを「3」の高さで投げ続けるとか、「4-4-1」にしてみる、ということで、言葉では表現がなかなか難しい技の内容を伝えることができます。こんなところはちょっと数学に近いかな、と思います。
※サイトスワップの詳しい説明はこちら
■ジャグリングの醍醐味は、舞台で演ずること。国立劇場は大盛り上がり
現在の筑駒Jugglersの「大黒柱」、西村悠くん(高校2年)
――ジャグリングの上達のコツは何でしょうか。
ひたすら練習あるのみですね。結局「コツ」って、練習を重ねる中で自分でつかむものだと思います。うまい人に教えてもらって、その人の動きを見ながら、どんなふうにやったらいいか自分なりに考えて動きに反映してみる、という感じですね。
――――得意技はどのように作っていくのですか。運動神経のよさや、柔軟性などが活かされるのでしょうか。
うまいかどうかと運動神経はあまり関係がないと思います。確かに、敏捷性があるとか、体が柔らかい方が技をするには有利かもしれないですが、それがあるからといってうまくなるとは限りません。
僕はクラブが得意ですが、クラブというのは道具の形を利用した動きが特徴です。ある程度基礎ができてきたら、基本の3本を使って難しいことを器用にこなすのか、扱うクラブの数を増やすかという方向性を決めることになるのですが、いろいろやってみて、数を増やす方を選びました。ひたすらやっているうちに安定してできるようになってきたので、「こっちならいける」という感じでしたね。
――国立劇場の舞台はどうでしたか。
ジャグリングの醍醐味は、やはり舞台で演ずること、見ている人に拍手をもらえることですが、国立劇場は、舞台の大きさやお客さんの数だけでなく、盛り上がりがすごかったです。今まで味わったことのない経験でした。
<次代のエース候補に聞きました>
■人を楽しませることがジャグリングの魅力。歓声がうれしい
風祭覚くん(中学2年)
――ジャグリングの魅力は何だと思いますか。
何と言っても、見ている人を楽しませることができることです。自分の技に「おーっ」という歓声が返って来るのが嬉しいです。
あとは、難しい技でも、繰り返してやり続けるとできるようになることですね。練習量は裏切らない。何度も何度もやっていると、ある時ふっとできるようになるんです。3回に2回できるようになれば、あとは安定してできる、そんな感じです。
――筑駒Jugglersの雰囲気を教えてください。
中学と高校が一緒に練習していますが、厳しい雰囲気は全然なくて、のどかですよ。先輩達には、ジャグリングでも、勉強でもすごい人がいます。そういう中で、技を教えてもらったり、もまれたりしていくうちに学校全体のことがわかるのもいいところです。
■小学生の時に見た筑駒Jugglersにあこがれて
渡辺真生くん(中学2年)
――国立劇場の公演に出演した感想を教えてください。
僕は、校外の人の前で演技した経験は去年の文化祭以外なかったのですが、今年6月の部内大会で、自分で構成を工夫してやってみたら、すごくうまくいったんです。そうしたら、先輩から国立劇場に出てみないか、と言われて。2度目の舞台が国立劇場って、すごいですよね。出演してみて、お客さんの多さに改めて驚きました。でも、こういう舞台に立って、拍手をもらえたことは、自分にとってすごく自信になりましたし、大事な経験だったと思います。
――ジャグリングを始めたきっかけは?
小学生の時、筑駒の文化祭に来て、初めて筑駒Jugglersの舞台を見ました。先輩達が本当に楽しそうにやっていたのを見て、入学したら絶対に入ろうと思ったんです。炎のトーチも、かっこよかったですしね。
――これからの目標は何ですか。
技術を上げるとともに、先輩達のように「見せる」ということも学んでいきたいです。後輩に教えるのも好きなので、どうしたらうまく教えられるかということも究めたいです。ジャグリングの中学生以下の大会もあるので、挑戦してみたいです。
筑駒Jugglersの皆さん。メンバーは全員で30人くらいいます。
■ジャグリングの種類 (説明は筑駒Jugglersのホームページより)
[ボール]
ジャグリングの基本。
「お手玉」の西洋版、といったところ。田舎にいるおばあちゃんの多くは3つでもできますがジャグラーズメンバーは4つ以上もやります。もちろん数が増えれば難易度も上がります。
[ディアボロ]
別名中国ゴマ。
中央の金具にスティックと呼ばれる二本の棒の間に張られた糸を巻きつけて回転をつけ、様々な技をします。投げたり、ぐるぐる回したり、スティックを手から離したり色々なことができ、派手な技が多いです。
[クラブ]
クラブとはこん棒の意味。
ボールと同じように投げて扱いますが、大きいので見栄えがします。ただしその分難易度も上がります。6本以上で行うクラブパスが筑駒Jugglersの基本。パスに人を挟むこともできますが、大変危険なため、続いている間に大きな拍手を宜しくお願いします。
[シガーボックス]
箱。通常3つ以上で使います。こちらも磁石などは全く付いていません。外の2つの箱を持ち、箱を入れ替えたり投げたりといった技をします。コミカルな技からダイナミックな技まで、テンポ良く演技します。
[デビルスティック]
磁石とか粘着テープとかの付いていない木の棒。
2本の細い棒で真ん中の棒を叩き、空中で操ります。投げ上げたり、まわしたり、足の間に通したりこちらもたくさんの技があります。本当に上手い人は、真ん中の棒を傘や竹刀、箒などに変えても操ることが出来ます。両端に火をつけた「ファイヤーデビル」も存在します。文化祭でなら見られるかも…?
■これならできる! ジャグリング初歩の初歩
ジャグリングをやったみたい! という人のために、代表の村田くんに最初のコツを教えてもらいました。
お手玉というと、ボールの軌道が一つの大きな輪を描くようなものを思い浮かべるかもしれませんが、我々筑駒Jugglersで最初に習う「3ボールジャグリング」は少しやり方が違い、8の字を描いて左右対称になるように投げます。詳しくは以下のURL(※)やYouTubeなどの解説を見て頂くとわかりやすいかと思います(実はボールジャグリングというのは5個、7個…と増えても、すべて8の字軌道で投げています)。
上達のコツは「慣れ」と「試行錯誤」です。ジャグリングの腕と手の動きというのは特殊なもので、ほとんどの人は始めたときに苦労しますが、あれこれ投げ方を試したうえで少し続くようになったら、ひたすら練習してみてください。老若男女関係なく、大体の人は1週間もすれば一発芸として人前で披露できるほどには上達しますので、ぜひ手軽に挑戦してみましょう!
ちなみに使うボールは、跳ねなければ何でもいいと思いますが、お手玉のような握りやすく投げやすいものがやりやすいです。
※「ボールジャグリングの基礎」はこちら