(2014年7月取材)
「文化系のインターハイ」全国高等学校総合文化祭(総文祭)が今年も開催されました(7月28日~30日の3日間)。今年は茨城県内の17の市町村で、23の部門に約20000人の高校生が集まりました。
今回、みらいぶでは先端研究の街・つくば市で行われた自然科学部門を密着取材! 33の都道府県からののべ164校が、物理・化学・生物・地学の4部門の研究発表とポスター発表で、日頃の研究成果を発表しました。
他には、高校生が第一線の研究者と食事をしながら研究の現場について話を聞くサイエンスカフェや、つくば市近郊の先端研究施設やフィールドを見学する巡検、夏の夜空を観察する観望会など盛りだくさんのプログラムが行われました。また、宇宙飛行士の古川聡さんの講演も行われ、会場からの質問で大いに盛り上がりました。
[研究発表]
自然科学部門の研究発表は、物理・化学・生物・地学の4部門に分かれ、1校あたり持ち時間12分の発表と、その後4分の質疑応答で行われます。審査は発表前に提出された研究発表論文による事前審査(計10点)と、発表会場での当日審査(計30点)によって行われます。
終了時間が近づくと呼び鈴が鳴らされ、プレゼン中はかなり緊迫した雰囲気です。また、質問タイムでは研究に取り組む仲間同士らしく、的を得た鋭い質問の応酬が見られた会場もありました。
<レポート&ミニインタビュー>
YouTubeで見た振り子集団の美しい模様の謎に迫る、日本一物理を楽しむ部活
「振り子集団の描く模様の解析」
手に入りやすい金属を使って熱電対温度計を作ってみた!
「熱電対による温度測定」
雪解けの春に、炎天下の真夏に、逃げ水の謎を追いかける
「逃げ水~完結編~」
◆滋賀県立河瀬高等学校 科学部
土壌中のダニは森林環境の変化を映し出す!
「ササラダニから見る森林土壌(彦根山と荒神山)」
◆茨城県立鉾田第二高等学校 生物部
身近な材料で学校の池の水質浄化を試みる!
「ホコニ水質浄化プロジェクト」
市民の憩いの場である、学校の裏山「城山」を解明する!
「山の土壌の分析~土壌の性質を決めるものとは~」
イスノキとアブラムシのコラボに珍現象。日本初「二重ゴール(虫こぶ)」発見!
「イスノキに二重にゴールを形成する二種のアブラムシ間の相互作用」
高くまっすぐ飛行する、高性能で安全なロケットをめざして
「高性能で安全なロケット」
巨大津波からの復興を願い、ふくしまの美しい鳴き砂の海岸を調査!
「鳴き砂に関する調査 ~鳴き砂きゅっきゅっ~」
オリジナルpH万能指示薬でゲル化実験。さらに新たな酸化還元万能指示薬の実用化をめざす
「指示薬の研究」
水田土壌に棲む発電微生物は新たなエネルギー資源になりうるか!?
「水田土壌の微生物を用いた発電 IV」
なぜ、月の色は昼間は白っぽく、夜は黄色っぽく見えるのか
「月の色の不思議」
◆兵庫県立三田祥雲館高等学校 理科部
菌が脱走?!動き回る、ふしぎな「変形菌」の生き方の謎に迫る!
変形菌モジホコリの「生きていく戦略」とは ~負の走化性要因はどのような意味があるのか~
よみがえった黄金色の膜~ヒカリモの生態の秘密に迫る
「津波の被害をのりこえたヒカリモの能力を探る研究」
一次電池の研究からの発展。二次電池の充放電効率についての疑問を解く
「鉛蓄電池の充放電効率」
人の役に立つロボットを作りたい! レスキューロボットとしての自律型航空ロボット開発へ
「自律型航空ロボットの研究」
◆福岡県立宗像高等学校 電気物理部
ロボカップ出場経験を活かして、全方向に自由に動かせる3輪オムニホイールロボットを考えた
「3輪全方位移動ロボットの制御に関する研究」
◆広島県立広島国泰寺高等学校 科学部 理数ゼミ生物班
砂漠の緑化や収穫量アップも夢ではない?! ツノゴケの不思議な性質の秘密
「CCMを持つツノゴケは地球の救助隊 遺伝子解析からわかったこと」
[ポスター発表]
「ポスター発表」は、物理4、生物16、地学8、化学7の計35校の出展がありました。研究内容や研究成果を縦120cm×横180cmまでのサイズの用紙にまとめ掲示し、実験器具なども展示。来場者がブースを訪れるとプレゼンし、質疑応答や意見交換を行います。 審査は、研究発表と同様、発表前に提出されたポスター(パネル)発表論文(10点)と発表会場での当日審査(30点)で行われます。通りかかる人を引きつけるプレゼンで笑いを取ったり、見学する人との間で議論が始まったりと、なごやかな中にも熱気があふれていました。
<レポート&ミニインタビュー>
毎年沖縄を襲う台風の風速のメカニズムを、扇風機と掃除機で解明する!
「台風の積乱雲が風速に及ぼす影響~扇風機と掃除機を用いた積乱雲モデル実験を通して暴風のメカニズムを探る~」
◆北海道旭川東高等学校 化学部
簡単な実験なのに実は反応式がわからない? だったら自分達で解明する!
「塩化ナトリウム型ボルタ電池の正極反応」
◆山梨県立韮崎高等学校 生物研究部
体内リズムを整える蛋白質が光に集まる行動に必要なことを突き止めた !
「キイロショウジョウバエは何色が見えるのか」
◆福島県立磐城高等学校 天文地質部
津波による人的被害をより抑えるためのハザードマップを、さらに強化する
「津波の被害を抑制するための都市構造の研究~いわき市四倉地区を例に~」
地元の名産 日本酒の製法から水質調査を考える
「米からCa、Mgは溶け出すか? ―日本酒の硬度上昇の原因を考える―」
ペットボトルロケットで救援物資を簡単・エコに運搬!
「ペットボトルロケットを用いた災害時における簡易的な物資運搬法」
絵本でアピール!ヒカリモの不思議な生態
「ヒカリモの黄金色の膜が一年中見られる洞穴と見られない洞穴」
◆広島県立広島国泰寺高等学校 科学部 理数ゼミ生物班
自作の実験装置で、植物の葉に含まれる気体の量を測定してみた!
「葉の中に気体が含まれている?」
[サイエンスカフェ]
今回のいばらき総文祭で初めて行われたのがサイエンスカフェ。物理・化学・生物・地学の4つの分野に分かれた会場で、最先端の研究者や企業人と食事をしながら、研究分野や研究生活のようすについてお話を聞いたり、質問をしたりしました。科学の街・つくばらしい企画です。
最新の研究内容だけでなく、ふだんはなかなか聞けない研究の裏話や、論究者として生きていくための心構えなど、様々な話題で盛り上がりました。
[巡検研修]
自然科学部門の恒例企画が巡検です。毎回開催地近郊の博物館や大学、工場、研究施設、フィールドなどの見学や実地調査が行われますが、今回は何と言っても日本の主要な研究施設が集中しているつくば市! 行き先にはJAXA(宇宙航空研究開発機構)筑波センター、(株)インテル本社、高エネルギー加速器研究機構、筑波農林研究団地、物質・材料研究機構など、日頃はなかなか入ることができない施設が揃いました。
みらいぶは、産業技術総合研究所の見学コースに同行しました。ここでは、日本中の地質情報や鉱物資源などが展示される「地質標本館」と先端技術を紹介する「サイエンススクエアつくば」の見学、ロボットの最先端研究の講演、化石の観察などが行われました。
[表彰&講評]
3日目の閉会式で審査結果の発表があり、28校が表彰されました。
自然科学部門の審査委員長のお話の中で、自然科学の研究結果を発表するにあたってのとても重要な話がありましたので、紹介します。
「今回は研究発表も、ポスター発表もいずれも高水準で、研究内容に大きな差はありませんでした。差がついたとすれば、アピール力の違いです。
第一に必要なのは、『どんな動機で・何を目的に・何がしたいか』を明確に訴えることです。研究の中には、先輩から引き継いでいるものもあり、自分達の中ではこれらのことがわかっているかもしれませんが、聞いている人達のために、これらを自分達の言葉できちんと説明することが必要です。もう一つは、結果が確かかどうかということ。地道に回数を重ね、確認していってください。これが説得力というものにつながります。
プレゼンについて言えば、声の大きさも含めた明瞭さと、自分達が話すことだけでなく質問に対して的確に答えられることも重要です。今回入賞した学校は、これらの点が優れていたと思います」
いばらき総文祭HPはこちらから