(2015年4月掲載)
地区大会すら勝ったことのない弱小高校演劇部が、元学生演劇の新任の先生や演劇強豪校からの転校生とともに、全国大会出場を目指す1年間の物語。ももいろクローバーZが主役を演じたことでも話題になりました。高校時代から映画や演劇で役者活動をしている元女子高生や、映画製作に携わり映画評も書く高校生、ももクロファンの高校生をはじめ、高校生が『幕が上がる』を観た感想を語ります。
『幕が上がる』
・ 原作:平田オリザ著『幕が上がる』(講談社刊)
・ 監督:本広克行(『踊る大捜査線』シリーズ)
・ 脚本:喜安浩平(『桐島、部活やめるってよ』)
・ 出演:百田夏菜子、玉井詩織、高城れに、有安杏果、佐々木彩夏/ムロツヨシ、清水ミチコ、志賀廣太郎、黒木華
★大ヒット上映中!
vol.1
演劇はみんなを信じてつくりあげるもの
堀春菜さん 女優(映画『ガンバレとかうるせぇ』ほか)
vol.2
映画に、自らの創作活動と演劇する友人たちを重ねて
松永侑くん 久留米大学附設高校映像研究同好会(福岡県立伝習館高校3年)
vol.3
試行錯誤し表現する姿は、音楽に取り組む私も共感<映画の原作を読んで>
谷原心蕗さん 立命館宇治高校[京都]3年
vol.4
高校生活で本気になることの大切さと難しさ
小坂真琴くん 灘高校[兵庫]2年
vol.5
夢中になるには覚悟も必要
(ペンネーム)かいくん 高校2年
vol.6
ももクロは物語を映すスクリーンにもなった
舩木駿一くん 灘高校[兵庫]3年
※高校・学年は取材時
vol.7
小説から映画、そして舞台へ
~舞台版『幕が上がる』を観てきました
平田オリザさんの小説『幕が上がる』が、2月の映画に続いて舞台作品になりました(2015年5月1日~24日、@Zeppブルーシアター六本木)。
vol.8
映画『幕が上がる』を観て
人と人とのつながりこそが、人生の幕を上げる
~日常知としての社会学
土井隆義先生 筑波大学人文社会系/社会学専攻
堀春菜さん 映画『ガンバレとかうるせぇ』主演のマネージャー役(当時高校3年生)
私はこの春、高校を卒業しました。大学進学をすることも考えましたが、「役者」という目標に向かって進んでいくために、大学には行かずに「役者」に専念する決心をしました。もう教室で眠たい目をこすりながら黒板の文字をノートに写すこともないし、映画も遊園地もカラオケも学割が適用されなくなってしまいます。そして、もちろん「部活動」もなくなります。
『幕が上がる』はTHE 青春部活映画!
地区大会突破が目標の演劇部が、ある先生と転校生の出会いによって目標を全国大会に変え、楽しみ悩み日々、奮闘する演劇部のお話でした。ももいろクローバーZの皆さんが演劇部でリアルに生きていて、素晴らしかったです。
でも、青春時代と言われる時をちょうど生きている私にとって、『幕が上がる』は理想のように感じて部活としては身近に感じることができなかったというもの正直な気持ちです。特に私は陸上部で個人競技だったためか、演劇部のようなみんなで一つの目標にむかって頑張ろう!みたいなことはなかったし、もっともっとたくさん揉めていたし、こんなにキラキラはしていませんでした。と、私本人は感じているけど、もしかしたら、周りからはキラキラと青春時代を過ごす学生に見えているのかな、なんて思ったりもします。
『幕が上がる』の原作を読んだ時に、「高校生らしい作品と言われても高校生の私には、よく高校生らしさが分からない」というような主人公の気持ちが書かれていて、なんだかとても私の気持ちを弁解してもらった気持ちになりました。
思い出す中学の合唱コンクール
みんなで一つの目標に向かって頑張った思い出としては中学の時のクラス対抗の合唱コンクールがあります。私のクラスは最初、全くまとまりがなくて、放課後練習をやっても帰ってしまう人がいたりして、みんなそれぞれ持っている目標がバラバラでした。ある時、伴奏者の友だちや、指揮者、パートリーダーなどの人の「本気でやってほしい、私たちは本気でやって優勝を狙いたい」という思いを知り、クラスみんなの心が動き、それから毎日練習をするようになりました。見事、優勝をすることが出来て、本当に嬉しかったし、みんなで1つになるってこういうことかなとも思いました。
自分を、みんなを、信じて
私も部活ではないけれど「演劇」をやることもあるので、そういった意味で『幕が上がる』はとても面白く、いろいろなことを思い出しました。
私はついこの前の3月にある洋服屋さんで1ヶ月間、公演していた演劇ユニット「モラトリアムパンツ」の『君が決めてよ明日のことは』に出演をしていました。そこで、私は演出家の方によく言われていたことがあります。それは「もっと自信を持って。みんなを、自分を、もっと信じて」というでした。私は大好きな作品だったからこそ、作品を壊さないようにしないと、足を引っ張っていないかな、など不安も多くなかなか自分に自信を持つことができていませんでした。
しかし、演劇は1人でつくるものではなく、みんなでつくりあげるもの。自分を信じないということは、他の共演者の方も信じていないと同じことではないのかとある時ふと気がつきました。みんなでやってきたことをもっともっと信じようと思えた時、少し今まで感じていたプレッシャーが楽しさに変わった記憶があります。「幕が上がる」では、部内全体がお互いのことを信頼出来ている部活で、だからこそ、みんなで全国大会に行こう!と堂々と言えたのだろうなと思います。とてもかっこいいし、羨ましいです。
1度きりの本番
私は今回、『幕が上がる』を観て、やっぱり演劇はいいなぁと思いました。本番、幕が上がる前に、緞帳の後ろでみんなでひとつになって手を重ねる瞬間。幕が上がる直前、それぞれの立ち位置でそれぞれがいろいろな思いで集中を高めるあの瞬間。高校演劇は、泣いても笑っても1度きりの本番に何ヶ月も準備を重ねます。だからこそ、終わったあとに、こみ上げてくる思いは相当なものだろうなと思います。『幕が上がる』は、大人になったらもう1回観たいと思います。そしたら違う見方が出来るのではないかなと思えるような映画でした。
堀さんがマネージャー役を演じた映画『ガンバレとかうるせぇ』は、釜山国際映画祭へ
映画『ガンバレとかうるせぇ』は、『第36回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)では、映画ファンの一般審査員が選ぶ映画ファン賞と、来場者による投票で選ばれる観客賞という二つの賞。
※第36回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)』 http://pff.jp/36th/
【福岡会場】2015年4月24日(金)~26日(日) 福岡市総合図書館(福岡会場以外は終了)
釜山国際映画祭では、アジアの新人監督作品にエントリーの12本に選ばれ、映画祭「TAMAシネマフォーラム」でも、111作中6作にも選ばれました。
※釜山国際映画祭HP
※映画祭「TAMAシネマフォーラム」
NHKのミニミニ映像大賞でもグランプリを取りました!
さらに、第12回NHKのミニミニ映像大賞で、堀さん主役の作品『time』がグランプリを受賞しました。(監督/脚本/編集:中川駿)
今度は、陸上部の女子マネージャー役に扮しました。わずか120秒の中で、言葉ではなく、いろいろな表情を通して、その気持ちを表現しています。
審査員は、『ニシノユキヒコの恋と冒険』の井口奈己監督や、実写版の映画『魔女の宅急便』の清水崇監督などの映画関係者。堀さんの映画での活躍もますます期待できます。
NHKミニミニ映像大賞:http://www.nhk.or.jp/minimini/
『幕が上がる』映画版あらすじ
地区予選敗退。最後の大会を終えた先輩たちに代わり、部長として富士ヶ丘高校の演劇部をまとめることになった高橋さおり(百田夏菜子)。「負けたらヤなの!」と部員の前で意気込むさおりだが、悩める日々が続く。どうやったら演技が上手くなれるの? 演目は何にすればよいの? 「わからないー!」
そんな時、学校に新任の吉岡先生(黒木華)がやってきた。元学生演劇の女王だったらしい! 美人だけどちょっと変わったその先生は、地区大会すら勝ったことのない弱小演劇部の彼女たちに言った。
「私は行きたいです。君たちと、全国に。行こうよ、全国!」
気迫に満ちたその一言で、彼女たちの人生は決まる。演目は「銀河鉄道の夜」。演出は部長のさおり。演じるのは、看板女優でお姫様キャラの”ユッコ”(玉井詩織)、黙っていれば可愛い”がるる”(高城れに)、1年後輩でしっかり者の”明美ちゃん”(佐々木彩夏)、そして演劇強豪校からのスーパー転校生”中西さん”(有安杏果)らの部員たち。吉岡先生と、頼りない顧問の溝口(ムロツヨシ)と共に、富士ヶ丘高校演劇部は、見たことも行ったこともない、無限の可能性に挑もうとしていた。
(「幕が上がる」公式HPより)