ニューヨークの国連本部に行ける!!

国際理解・国際協力の高校生のスピーチコンクールに行ってきました

~支援は募金or技術!? 大事なのは経済or環境? 日本は常任理事国になるべき?

(2013年9月取材)

玉川聖学院高等部 佐藤萌音(もね)さん
玉川聖学院高等部 佐藤萌音(もね)さん
JICA(ジャイカ)地球ひろば / JICAは、正式には「国際協力機構」。「海外青年協力隊」もココがやっています。
JICA(ジャイカ)地球ひろば / JICAは、正式には「国際協力機構」。「海外青年協力隊」もココがやっています。

「国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール」東京都大会が、『JICA(ジャイカ)地球ひろば』(東京・市ヶ谷)で行われました(9月24日)。

 

世界のいろいろなところで、内戦やテロ、貧困、移民や難民の人権などさまざまな問題があります。でも、自分なんかに何ができるのか、考えてみたことはありませんか?


そんな問題をテーマにしたスピーチコンクールが行われると聞いたので、行ってきました。

 

このスピーチコンクールは、国連が高校生に、国連の役割と国際問題に関心を持ってもらおうと行っているもので、今年で60回目を数える歴史のある大会です。世界各地で起こっている問題のために、自分は、日本は、国連は何をしたらよいか。これからの世界が平和で安全であるために、自分たちは何をできるかを、6分以内で話します。
 

東亜学園高等学校 ジェンティ今夢(いまむ)君
東亜学園高等学校 ジェンティ今夢(いまむ)君

国連って、高校生には遠い存在ですよね。でも、このコンクールは、日本で、しかも日本語で(ココがポイント!!)行われるもので、日本に在住の高校生なら誰でも参加OK(今の高校1・2年生は、来年がチャンス!)。地区予選やテープ審査で選ばれた人で全国大会を行い、上位4名は、なんと春休みに1週間、ニューヨークの国際連合本部を正式に訪問できます。今年は、10月21日(日)に全国大会があり、そこでのスピーチがサイトに掲載されますので、そちらもぜひ読んでみてください。


※コンクールの詳細や過去のスピーチは、「第60回 国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール」参照
 http://www.unaj.or.jp/concours/ (公益財団法人日本国際連合協会のホームページ内)
 

東京都の予選大会で、印象的なスピーチをした3人の高校生に話を聞くことができました。発表内容とインタビューを紹介します。

 

※佐藤さん、ジェンディさんは特賞を受賞し、東京都代表として10月21日の中央大会に出場することになりました。新出さんは優良賞を受賞しました。

 

高校生でも、100円からでも、途上国の支援はできる

玉川聖学院高等部 2年 新出有里那(ゆりな)さん

「国際協力の基盤になるもの。誰かにつながっていく支援」

新出さん
新出さん

<発表>
コンビニに置かれている募金箱。日本人にとっては「たった100円」であっても、それが集まるこによって、途上国の多くの人が教育や医療を受けることができます。私は、中3の時、途上国の現状を知るためにユニセフハウス(東京都品川区)を訪ね、内戦に加わる少年兵が使っているという銃を実際に持ってみて衝撃を受け、自分が途上国のことを何も知らなかったことを突き付けられました。


支援というと、どうしても持てる国から貧しい国へ、お金は多いほどいい、という図式になりますが、東日本大震災の後、アフリカの途上国の人達が、日本のためにと、なけなしのお金を募金してくれた、ということを聞きました。日本にそこまでのことができる人はいるでしょうか。


募金をすることは、高校生でもできる立派な国際協力の一環です。募金は、世界の向こう側の名も知らない誰かを思う国際協力です。震災の時募金をしてくれたアフリカの方々に学ばなければならないと思います。


だから、募金はとても大きな国際協力です。高校生ができることはわずかですが、募金という形での支援はこれからも続けていきたいと思いました。


そして、またそのお金が現地で誰のためにどのように使われるのか、ということにも、もっと目を向けていきたいと思いました。

 

 

<発表後にインタビューしました!>
---このコンクールに応募したのは、どんなきっかけですか。テーマはどのように決めたのですか。


学校に貼ってあったポスターを見て応募しました。中学生の時、担任の先生に勧められて品川のユニセフハウスに行った時に、自分が途上国の実態について何も知らなかったことに気がついて、すごく衝撃を受けたことが心に残っていて、その話を伝えたいと思ったのです。中学校の修了論文でコンビニ募金について調べたことがもとになっています。作文は8月頃から書きましたが、出場が決まったのが間近だったので、スピーチは短い期間で仕上げました。

 

---プレゼンがとてもよかったですね。自分の言葉で話していることがわかって、聞きやすかったです。


学校では、演劇部に入っています。「セリフを言うのに慣れているから平気でしょ!」と先生に励まされて逆にプレッシャーでしたけど(笑)、声色を変えてわかりやすく話すように心がけました。将来は、国際関係の仕事に就きたいと思っています。

カンボジアの貧しい子どもたちには、1ドルではなく知識や技術を。

玉川聖学院高等部 2年 佐藤萌音(もね)さん

「特質を生かした国際支援」

佐藤さん
佐藤さん

<発表>
想像してみてください。カンボジアであなたが乗った観光船に、子ども達がたらいのような船で追いかけてきます。最後まで追いかけてきた子があなたに向かって「1ドルちょうだい!」と叫ぶ。あなたはどうしますか? 1ドルあげるのは簡単です。しかし、それではその場しのぎに過ぎず、根本からの解決にはなりません。その場しのぎでない知識や技術を教え、現地に根付くヘルプをしてあげなければなりません。私は、これからは、現地でシェアされるような知識や技術を援助の中心にすべきだと思います。それが、未来の土台を作る援助だと思うのです。


日本はそれができる国です。途上国の人に援助を受け入れてもらうためには、「信頼」が必要です。私は、今年6月までスウェーデンに留学していましたが、留学中に、日本人に対する「信頼」と「期待」を感じました。日本人だと言うだけで、まじめで真剣な人、と見られました。宗教などに縛られない、中立的なポジションにあるとも言われました。


「信頼」と「中立性」という国際社会における優れた特性を生かし、世界の仲介役になること。これがこれからの日本の在り方だと思います。そして、これこそが「日本が未来の世界の平和を作ること」に対する信頼と期待であると思うのです。


皆さんは、あのカンボジアの子ども達の将来のことを思って、それでも1ドルをあげるでしょうか。


<発表後にインタビューしました!>

---このコンクールに応募したのは、どんなきっかけですか。テーマはどのように決めたのですか。


7月にポスターを見て出場を決めました。私の場合は、今年の6月まで交換留学で1年間スウェーデンに行っていたので、その間にいろいろ感じたことをどこかでぜひ発表したい、と思っていて、ちょうどいい機会だと思って応募しました。


母が小学校の先生をしていて、小さい頃からユニセフやJICAなどのイベントなどにはよく参加していましたし、母の影響でいろいろな国の教育に興味を持っていたので、今日のスピーチの内容もその経験をふまえて考えました。

 

---今日は思い通りのスピーチができましたか。


スピーチは、学校説明会で中学生の案内をした時にやったことがあるくらいで、このような場で話したことはありません。練習する時は、後半になると疲れて棒読みになるので、最後まで持ちこたえられるよう気をつけました。将来は、日本と世界をつなぐ仕事に就けたらと思っています。
 

新出さんと佐藤さん。バックの写真は、「カメラマンがみた被災地・東北」の平林さんの作品です。
新出さんと佐藤さん。バックの写真は、「カメラマンがみた被災地・東北」の平林さんの作品です。

内戦が激化するシリアを、シリア人の父と憂う。中立的な日本が技術力で平和を支援して。

東亜学園高等学校 ジェンティ今夢(いまむ)君

「第2の故郷の平和を願い」

ジェンティ君
ジェンティ君

<発表>
ぼくの父はシリア人です。ぼくは日本で生まれて育ちましたが、シリアにも行ったことがあり、とても愛着を持っています。シリアの人も、とても親日的です。しかし、最近シリアでは内戦が激化し、一部では化学兵器が使われたと伝えられています。アメリカ軍がシリアを攻撃するかもしれない、という話もあり、ぼくも父もとても心配しています。


ぼくが尊敬するのは、ジャーナリストの山本美香さんです。彼女は1年前、シリアの内戦で銃撃を受けて亡くなりました。彼女は、戦場にあって、戦闘ではなくそこで暮らす市民の姿を伝えてきました。戦争で傷つくのはいつも市民です。日本は、たび重なる自然災害から、何度も立ち直ってきました。その技術力を、今度はシリアの人達に貸してあげてほしいと思います。大きな国、強い国の都合ではなく、中立的な立場の日本だからこそ、シリアの市民を応援することができると思うのです。

 

 

<発表後にインタビューしました!>
---このコンクールに応募したのは、どんなきっかけですか。テーマはどのように決めたのですか。


こういう大会に出るのはまったく初めてです。ふだんは部活で重量挙げ(77kg級)をやっていて、大会に出場することもあります。


ぼくの高校では、全員で作文を書いて、そこで選ばれた人が校内の弁論大会に出るのですが、そこで2位になって、このコンクールに応募してみないか、と先生に言われて出場しました。学校で知っている人の前で話すのとは全然違うし、今日来て初めてトップバッターだと知ったので、緊張しました。

 

---シリアのことが心配だと思います。現地にどのくらい行ったことがありますか?


シリアには3-4回行ったことがあります。父の実家があるのはアレッポという街で、夏はさすがに暑いですが、生活は日本と変わりません。最後に行ったのは小学校の時ですが、ぼくの印象の中のシリアの人は、みんな明るくて優しい人ばかりです。市場に行くと、「ほら、これ味見してごらん」と気軽に声をかけてくれるような。だから、現在のシリアの状態はとても気になります。親戚は、現地で会社をやっています。なかなか情報が入って来ないので、インターネットで調べて、父と一緒に心配しています。

 

---将来の夢を教えてください。


将来は、航空機関係の仕事に就きたいと思います。パイロットでも設計でもいい。『風立ちぬ』という映画を見て感動したので。まずは航空関係が勉強できる大学に進学したいです。2020年のオリンピックの時、ぼくは24歳。シリアの選手の世話をしてあげられたらいいですね。

 

JICAの前で
JICAの前で

チョコレートにも、氷河にも国際問題が隠れている。考えるべき問題は山ほどある!

東京都では、今回書類審査を通過した18人の高校生が参加しました。ほかの参加者の発表を紹介します。

 

◇日本人が1人あたり1年に2㎏も食べているというチョコレート。その生産国のガーナでは、原料のカカオ豆を生産すればするほど貧困になっていくという貧困問題が生まれています。先進国がカカオ農園を作り、カカオ豆を安く買いたたくので、生産するガーナ人にはお金が入らず、子どもは教育も受けられない。そんな仕組みはおかしいと思います(高1)。

 

◇スイスへ氷河を見るために家族旅行しました。そこで、20年前に母が来た時見た氷河が、数年前の猛暑ですっかり消え、地元の人が肩を落としていた姿を見て、残念という言葉では片づけられない、一人の力ではどうすることもできない無力さを感じました。環境保護や温暖化対策は、国境を越えて世界中の国々が取り組まなければならない、そして、先送りできない問題であり、国連の果たす役割が大きいと思います(高2)。

 

◇国連での日本の役割を訴える人もいました。


第2次世界大戦の勝利国が、いまだに安全保障理事会の常任理事国になっていることに疑問を投げかけた人もいました。それらの国は、核兵器保有国であり、被爆国である日本こそ平和貢献できるとして、日本が国連常任理事国になるべきだと話しました(高2)。


また、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロのとき、ニューヨークに住んで、テロ後も恐怖を感じて暮らしていた人は、国連で日本はもっと平和貢献の分野でリーダーシップを果たすべきと語りました(高2)。

 

◇経済発展と環境破壊の問題を考えた高校生も何人もいました。


中国人の友人の「外を歩くとマスクが真っ黒になるよ。健康が大事だよ」の発言から、経済重視の考え方を改め、環境保全が大事だと考えた人(高2)。

 

「アスベスト」という、建設資材から出る石綿繊維を吸引し、肺の病に陥って亡くなったお祖父さんの話から、環境問題を語った人(高3)。

 

今年6月に起きたインドの水害は、森林開発が招いたものだと考え、国連の提唱する「持続可能な経済開発」を実現するためには、技術の向上が大事だと訴えた人もいました(高1)。

 

みんなの話を聞いて思ったのは、国際問題には、いろいろな課題や視点があるということ。そして、海外に行ったり、海外の人と出会ったりすることだけでなく、ふつうに生活をしていく中にも国際問題を考えるきっかけがあるのだと、改めて思いました。
 

参加者全員で
参加者全員で
佐藤さん
佐藤さん
新出さん
新出さん

ジェンティ君
ジェンティ君

スピーチで大事なポイントはコレだ!

最後に、今回の審査員長の方から、大勢の人の前で話すポイントの解説があったので、紹介します。

 

・まず、はっきりと、きちっとした言葉で話す。練習は100回しよう!

 

・話すときは、話を聞いてほしい人、つまり会場の人たちを見ること。メモばかり見ていては迫力がなくなる。訴えたいことをしっかり頭に入れて、マスターしておこう。

 

・書いた原稿にとらわれると、間違えたり詰まったりしてしまう。自分自身の言葉で話せるようにしておこう。

 

・自分の言いたいことをわかってもらうためには、「論理が通っていること」が一番大事。今日の優勝者は、論理がとてもはっきりしていたね。

 

・テーマはよくても、聞いている人が「じゃあ、どうしたらいいの??」と思うようではダメ。問題に対して、自分なりの答えをきちっと出しておこう。そのためには、説得力も大事。どれだけ真剣にそのことを考えているか。本当に自分の考えかを伝えること。

 

学校のスピーチやプレゼンテーションで、参考になりそうです。

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