前田智大くんのMIT便り ~世界のトップ大学ってどんなとこ?
第8回 授業の取り方からサークル活動、恋愛観まで、東大との違いを語りつくす!
前田智大くん MIT [Electric Engineering & Computer Science] 2年
ゲスト 高島崚輔くん ハーバード大学1年
(2016年6月掲載)
前回に続いて僕の高校の後輩の高島(ハーバード大)との対談形式で、ハーバードとMIT、東大の違いについて話していこうと思います。
大学内での活動がメイン(アメリカ) vs. 大学外での活動時間が取れる(日本)
高島:僕たちは、2人とも渡米する前に東大に4か月通っていたよね。東大ってどうだった?
前田:前期教養課程しか知らないけれど、東京という大都市の中で、時間もゆとりがある中でいろいろ活動できるのはいいことやと思う。MITは川を渡ればすぐボストンやけれど、あんまりボストンには行かないし、キャンパスの中にいることがほとんど。でも教育の質は、アメリカのほうがやっぱり高いと思う。
教授も、世界の科学を発展させる基礎を作っているという誇りがあるらしいし、そもそも教育をどれだけ真剣に見ているかが違うように感じる。もちろん、教える人によって差があるから一概には言えないけれど、この授業は日本ではないなといえるような質の授業はいくつかはっきりと言える。
高島:たしかに。アメリカは、教授の熱意と学生の熱意の相乗効果がいい影響をもたらしてるよね。1学期間に取る授業の数が平均4つだから、本当に学びたくてこれに時間を割いてもいい!と思う授業しか取らない。教授は教授で、学期末に生徒から受ける評価がそのまま教授としての評価になるから全力で授業をするし、自分の専門分野の面白さをこれでもか、とぶつけて来る。
あとは、4つだから単位を集めるっていう考え方もないよね。自分の専攻に必要な授業は取るけど、それも「必修」じゃなくて選択式だし。ハーバードには『General Education (GenEd)』という卒業要件があるから、どんな専攻の人も「芸術」「社会」「科学」「数学」などの8種類の授業は取らないといけない。
それを満たすために楽単(ラクに取れる単位)を考える人もいるけど、結局どれもハードだから好きなものじゃないとやってられないし、逆にどんどん好きになることもあるらしい(笑)。
前田:取れる授業が少ないだけに、しっかり授業を選ばないといけない。逆に、面白そうやけれど学ぶ時間がないような授業もあるから、もったいないとも思うけど。友達に今学期授業9個とった人がいるけれど、忙しくなりすぎて彼女と別れたらしい(笑)。5個以上授業を取ると、生活のクオリティーを犠牲にしないといけない。
高島:9個…やばすぎ(笑)。サークルはどう?
前田:サークルに関しては、アスリートは別としてコミットメント(真剣に取り組むこと)が少ない気がする。コロコロ変えたりするし。上達せずに中途半端に終わる子もいる。
そういう意味では、日本のクラブ活動ってそれなりにガッツリやるから良いよねって思う。勉強するために大学に来ていると言われれば確かにそうなんだけど、それでも自分の好きなことに時間を割くのはいいことやと思う。
高島:僕がやっているラグビーは結構コミットあるし、学生新聞のカメラマンや学生会議の運営も、意外とやらないといけないことが多いかも。まあ活動自体がサークルレベルじゃないからかもなんだけどね。自分たちはプロフェッショナルだ!という自負があるように感じるな。
東大との比較でいうと、インカレがないのは残念。やっぱりハーバードって狭いコミュニティだから、その中で終わってしまう感はある気がする。東大のときにインカレのゼミに在籍していたんだけど、いろんな人と出会えて本当におもしろかった。
あと日本との比較で言えば、恋愛観とかどうなの?
前田:高島からこの話題が出るとは!
日本は、高校生や大学生は長い間片思いでずっと秘めていて、全然話したことないけど、放課後呼び出して告白っていうのが割とありやけど、アメリカでそれをすると「は?」ってなる。とりあえず相手のことを知った上で付き合うというのが一般的で、まずはデートしてみて、相性を見るのが普通。ドモホルンリンクルの無料お試し期間みたいな感じ(笑)。
だから、ボディータッチとかは精神的な近さを意味するわけではなく、軽さでもなんでもない。韓国人の留学生の友達と話していて気づいた。カルチャーショックってやつやな。
高島:なるほど、勉強になります…(笑)。ずっと秘めとくのは日本人らしさかもね、昔ながらの「忍ぶ恋」のような。忍んで忍んで、和歌にしたためる恋が日本人の美徳という意識があるのかな。
MIT vs. ハーバード 学生はお互いをどう見ている?
前田:じゃあお互いの学校についてどう思ってるか話そうか。
MITにはハーバードってラクそうやなって印象を持っている人が多いかな(笑)。俺はそうは思わないけど。例えば、MIT confessionっていうMITの学生が匿名で投稿するページがあるんやけど、「MITの宿題の休憩にハーバードの宿題でもするか」っていう投稿がされたり。
高島:なんやそれ。腹立つ(笑)。まあMITのめちゃくちゃ難しい理系の課題に比べれば、ハーバードのGenEdの課題は簡単かもしれませんが…。
でもね、そもそもハーバードの敵はイェール(Yale)だから、MITに関しては仲間意識があるかも。近くの優秀な大学で、お互いボストンを盛り上げていこうぜ!みたいな。どちらの大学も、キャンパスがあるのはケンブリッジ(Cambridge)でボストンじゃないんだけどね。
イェールに関してはライバル意識がすごい。中国語の授業でも例文で「ハーバード大学の学生はイェール大学の学生よりも遥かに賢い」とか「ハーバード大学のアメフトチームはイェール大学を大差で破った」とか出てくるからね。実際アメフトはハーバードが圧倒してるんだけど。MITに関しては結構よく書かれていたような(笑)。
前田:文系のハーバード、理系のMITって言われてる割には正当に評価されてないっていう思いはあるんじゃないかな。やっぱりハーバードのほうがブランドがある。はっきりいうと嫉妬やな(笑)。特に日本だと、ハーバードの名前はすごい効果あるし。でも、この記事のタイトルにあるように、MITの前田とか、ハーバードの高島とか、名前の前に学校名がくるようじゃ、正直おたがいまだまたたいしたことないな(笑)。もっと頑張らないと。
高島:その通り! 頑張らないとね。
夏休みは約3か月。どんなふうに過ごす?
前田:MITの学生はテック系(技術系)のインターン(※)が一番多くて、その次が大学に残って研究。1年生とかでも結構インターンをしている人が多い。ボランティアとかはあんまりないと思う。
割とインターンとか研究しないとダメみたいな風潮はあるから、夏にあるインターンや研究プログラムを探して、ポジションをもらうのは、やっぱりそれなりにきつくて、ホイホイとは手には入らない。
※学生が就業・就職前に事業所等で一定期間実習的に 勤務すること。将来就きたい仕事のスキルアップを目的とすることが多い。
高島:インターンはやっぱり盛んだね。高校時代に軽くインターンしていた経験がある子も多いから、1年生からインターンやる!っていう子も多い印象。
MITと少し違うことがあるとすれば、理系の研究をする子は少ないかも。逆に、「社会に貢献する」ことを重視する人は意外と多くて、大学で学んだ知識を活かして発展途上国で井戸を掘ったり、海外で高校生のために教育プログラムを運営したりする子も多い。
あとは、僕もやってるんだけど、学生会議の運営。学校が連休になる時を狙って世界中から参加者を集めて行うから、多様な人材が集まって面白いんだよね。参加してくれた人も「人生を変えた経験だった」って言ってくれることもあるし、これも一つの「社会に貢献する方法」なのかもね。
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