前田智大くんのMIT便り ~世界のトップ大学ってどんなとこ?


第2回 日本の大学と比べ自由度はかなり高く、選択肢もより多い
~医療機器のデザイン、ロボット制御など、MITの授業を紹介!

前田智大くん (Electric Engineering & Computer Science 2年) 

(2015年11月掲載)

いたずら大好きなMITの学生

写真は、10月21日のMITの様子です。この日は、映画の『Back to the Future』で主人公がタイムトリップした「未来」の日で、タイムトリップしたばかりの車が木にぶつかってしまったというジョークを誰かが作ったみたいです。

こういったジョーク(いたずら)をMITではHackといい、今週も誰かがWelcome to MIT Zooという張り紙をロビーに貼り、いろんな動物の模型をキャンパス中に置いていました(写真)。

宿題の量は多い!

今回はできるだけMIT での具体的な様子を伝えるために、授業について紹介します。

MITに限らず、大学にはいろいろな種類の授業があり、実際に手を動かしてものを作る授業や理論を学ぶ授業などがあります。手を動かしてものを作る系の授業は、理論の授業を取ってからでないと取れないことが多く、手を動かすことで理論を実際に使うことの難しさを学びます。


ただ前回に書いた通り、日本の高校や大学と違い授業一つ一つの分量が多く、レクチャー(一般的な教室での授業)が2−3時間、Recitation(少人数で、大学院生が問題演習などを教えるもの)が2時間、宿題が8時間を目安にされています。宿題は、友達と協力すればしっかり解くことができるけど、一人では厳しいぐらいの難易度に設定されています。一つの授業は単位12個分で、単位は週1時間あたり1個、つまり授業一つが週12時間程度かかるように設計されています。

専攻(大学で学ぶ専門分野)によって異なりますが、僕の専攻では必要な単位数は全て合わせて31×12の372単位で、一学期あたり13週あるので、合計4836時間使わないといけないわけです。時間にしてみるとすごい量ですが、実際は予想よりもきついわけではありません。ただ、ハロウィンを楽しむ代わりにテスト勉強したいと思う程度には忙しくはあります。

 

1000ページ近くある教科書を1学期で終わらせます。この教科書の著者のオッペンハイムはMITの教授で、signal and systemの分野では有名な教授です。今でもMITで幾つかの授業を担当しています。


授業は自分で選ぶ。自由度が高いから、専攻を変えることも簡単


授業は、数百個ある授業の中から自分の好きなものを取ることができますが、専攻によって、取らないといけない授業がある程度指定されています。余力があれば、興味のある授業を取ることも、他の専攻に必要な授業を全部取れば専攻を2つにすること(double major)もできます。指定された最低限の授業さえ取ればよく、取る授業のスケジュールも自由なので、専攻を変えることも簡単です。日本の大学と比べ自由度はかなり高く、選択肢もより多く与えられていると思います。僕の場合は、生物学に関係する電子工学を学びたいのですが、自分で授業を選べるので、取る授業も生物寄りに設定することができます。他の電子工学の分野の基礎の授業を取る代わりに、大学院の授業を取ることもできます。

授業のリストはhttp://student.mit.edu/catalog/index.cgiで見ることができます。
また、MITのオープンコースウェア(※)のページ(http://ocw.mit.edu/)には、授業で取り扱われている資料などがあるので、のぞいてみると面白いでしょう。
※大学や大学院などの高等教育機関で正規に提供された講義とその関連情報を、インターネットを通じて無償で公開する活動[Wikipediaより]

 


MITの授業ってどんなことをするの?
2.086
いきなり何の数字?となりそうですが、MITの授業は基本的に数字の名前がついています。2.086は機械工学におけるnumerical computationの授業です。numerical computationとは、基本的に統計学です。何かのデータを取る時に、取るデータの数は限られているから、そこから結論をどう導き出すかということを学ぶものです。例えば、池に汚染物質が流れたときに、何箇所かで汚染物質の濃度を測り、それを元に池における汚染物質の濃度の分布を予測しようというものです。授業では数学的な背景を学び、宿題ではそれをプログラミングに落とし込むという構成になっています。宿題では、論文で使われたモデリングを再現する(飛行機の翼にかかる浮力のモデル)など、実用的な課題が多くありました。

HST.s49
この授業は、医療機器をデザインし直して、電気のない田舎にいる人たちのための身の回りにあるもので作れるデバイスや、医療機器をつけている人たちが周りの人から差別されないようなものを作ろうという授業です。あまりアカデミックな内容ではないですが、コンセプトは面白いです。


僕はこの授業を取るまでは、医療機器は最先端でかっこいいものというイメージを持っていましたが、最先端でかっこいい医療機器を使えない人がたくさんいることに気づきました。この授業は、それを解決する手段として、患者に自分たちで簡単な医療機器を作るツールを与えればいいんじゃないかというもので、医療機器を作るというよりも、ツールキットを作って患者に渡し、彼らがそれを使って、健康の問題に自分たちで解決策を見つけられるようになる、ということがゴールとなっていました。一言で言うとDIY(Do It by Yourself) in Health Careで、先生はそのアイデアが認められて、MITのtech reviewが発表する35歳以下のイノベータ35人の一人に選ばれたことがあります。

 

授業は2週間ごとにプロジェクトがあり、最初の1週間でデバイス(機器)を作り、次の1週間でそれを使って得たデータを視覚化するというものです。

 

細かくはhttp://hstmakerlab.org/category/blog/にまとめられています。僕たちが作ったデバイスを先生が気に入ってくれたので、10月に、ニューヨークで開かれたWorld Maker Faireでプロジェクトを発表するブースをくれました。

6.01
このクラスは、一番入門レベルの電子工学、コンピューターサイエンスの授業です。今まで受けた授業の中で一番構成が工夫されている授業で、ロボット(センサーのついた小さい車)を壁から一定の距離を保って走らせたり、LEDを追いかけさせたり、ロボットをコントロールするコントローラーを使ったりして、制御や回路のトピックを学ぶという授業です。ロボットの性能を少しずつ良くして、楽しみながら手を動かして学ぶという構成なので、知識が定着しやすいように感じます。こちらもhttp://sicp-s4.mit.edu/tutor/index.py/6.01 でどんなものを使っているか見ることができるので、興味があればぜひのぞいてみてください。


6.115
MITの電子工学の授業で一番きついとされている授業です。まだ取っていませんが、半分楽しみで、半分怖いといったところです。マイクロコンピューターを作ろうという授業で、週20−30時間ぐらい実験室で手を動かして作らないと単位が取れないと言われています。いわゆる電気製品を、なんでも自分で作れるようになろうというのが大雑把なコンセプトで、ファイナルプロジェクトでは、USBを作ったり、カードスキャナーを作ったりできます。中には、レザーを弦の代わりに使用したギターを作って、それを元にスタートアップ(いわゆるベンチャー企業)を始めた人もいるらしいです。


全体的な感想では、授業はけっこう考えられており、数学、理論的背景をレクチャーで学び、その応用を宿題や、何かものを作るプロジェクトでアウトプットする機会が用意されているという感じです。授業も多様で、ガチガチのアカデミックで理論をひたすら学んで終わりのものもあれば、バランスのとれたもの、逆にプロジェクトしかしないものもあります。ですから、授業を選ぶ際は使う時間、理論と応用のバランスを考えて取るようにしています。

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