世界へ”FLY”する東大生
~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ
登阪亮哉くん(東京大学)
(2015年12月掲載)
第9回 世界一周最初の国、アメリカに到着
一人旅で味わった、「多様性」の光と陰
2015年9月30日15時30分、世界一周最初の国、アメリカに到着しました。
入国審査、荷物の受け入れをトラブルなく終え、最初の宿泊先である格安ホテルに向かいます。道中は思ったより人が少なく、初めての一人旅で気が立っていた僕は不安でしかたありませんでした。ドラッグで酩酊している人に出くわし、道路の反対側に逃げたりもしました。
苦労してたどり着いたホテルは、まさにアメリカという感じの装飾でした。格安の予約なので、14人の共用部屋に宿泊しました。事前に調べたレビューの通り、フロントの人がかなり不親切で、最初は部屋の場所がわからず、海外の洗礼を受けたような気がしました。
しかし幸いにも英語での会話自体は意外と聞き取れ、自分が伝えたいこともきちんと伝わったので良かったです。受験が終わってから、論文を読む以外はほぼ英語に触れていなかったため、実はとても不安でした。
取材までは10日ほど余裕があったので、翌日からはロサンゼルスの街を散策しました。最初に感じたのは、暑い!ということです。日本より緯度が高いのですが、沿岸を暖流が流れているために気温が高く、雲が少ないために常に日差しに照らされていました。
また、カリフォルニアはヒスパニック系の人たちが多く、街中では英語と同じくらいの比率でスペイン語が使われていました。バスの運転手さんはみな、英語とスペイン語がどちらも話せるようです。以上のことは受験地理で学んだことですが、それがここまで如実に人々の生活に表れるものなのだなあととても興味深く感じました。
一方で、受験勉強ではわからなかった気づきもありました。アメリカの街では、格差が目に見える形で存在する、ということです。
日本では想像もできない場面の洗礼も
ロサンゼルスと言えば、かなり有名な都市で、実際大通りは人や車が多いです。しかし、1本外れた住宅地などは人通りが少なく、かなり不穏な空気が漂っていました。そういった通りでは、行くあてがなさそうな人が、昼間から地べたに横になっていたりします。さらに驚いたのは、ロサンゼルス市役所の敷地内の公園が、ホームレスのたまり場となっていたことです。近くのバス停でバスを待っているときも、緊張を緩めることができませんでした。ある意味でこれもアメリカの「多様性」であり、その一端に触れたのかなと思います。
他にも、ハリウッドに行った際にこんなことがありました。ハリウッドではパフォーマーやコスプレをした人たちがたくさんいて、街自体が遊園地の中のような雰囲気です。浮かれていると、陽気な黒人男性に声をかけられました。どうやらミュージシャンらしく、CDを見せられて「これ俺のなんだ」と言われました。「いいね」と答えると、「サインするよ、名前何?」と聞かれました。思わずRYOYAと答えると、名前をCDにサインされ、CDを渡され、チップを要求されました。
ここで、押し売りにハメられたことに気づきました。しかし、ここまでのやりとりが非常に朗らかで、こちらもハリウッド気分で浮かれていたということもあり、10ドル支払って平和に別れました。ここまではよかったのですが、そこから立ち去ろうとすると、今度は3,4人の黒人男性がCDを渡してきました。もう手の内はわかっていて、向こうも朗らかさは一切なく完全にカモとして群がってきているのですが、かといってこちらに打つ手があるわけでもありません。結局、小銭しかないと言い張り、途中からは日本語しか話さないという形でコミュニケーションを拒否し、その場を乗り切りました。同じ手口の人たちをラスベガスでも見かけたので、調べてみると、どうやら世界中の観光地にいるそうです。日本では想像もできませんでした。
「先進国」という言葉ではくくれない、世界の事情を垣間見た気がしました。
※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/
前回の記事を読む
第1回 「飛び込め、躊躇なく」 世界一周を実現するチャンス
~FLY Program参加を決意したわけ
~価値ある1年をいかに自分で考えて創っていくか
第5回 なぜ幼児教育を取材テーマにしたか
第6回 休学経験者インタビュー:
世界40ヵ国以上、約300日間で回り、海外で働く人を取材し発信する旅
~生ぬるい自分を変え、同世代にいろいろな選択肢を示したい
第7回 世界一周のための準備
~幼児教育の専門家に会い、本を読み、取材項目をまとめた
第8回 実際に自分たちの手で幼児教育のプログラムを作ってみた
~準備の大切さと予定通りにいかない難しさを実感