世界へ”FLY”する東大生
~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ
登阪亮哉くん(東京大学)
(2015年11月掲載)
第8回 実際に自分たちの手で幼児教育のプログラムを作ってみた
~準備の大切さと予定通りにいかない難しさを実感
夏休みに日本人の子供と外国人が共同で農作業をするプログラムを企画
幼児教育についていろいろ調べていく中で、僕自身も実際に幼児教育に関する取り組みを行いたいと思うようになり、この夏に群馬県の南牧村というところで教育プログラムを実施しました。
きっかけは、教育に興味を持っている友達と同じゼミ(※)に入ったことです。自由に企画を立案して実行し、教授にアドバイスをもらうこともできるというゼミです。大学の食堂で友達と何をしようか話し合う中で、とりあえずお互いの興味がある分野を組み合わせてみよう、というアイデアにたどり着きました。そして、僕が幼児教育、彼がグリーンツーリズムを提示し、それらを組み合わせて「日本人の子供と外国人が共同で農作業をする」というプログラムを作ったら面白いのではないか、ということになりました。
※FLY Programでは、教授に認められれば休学中でも授業を取ることができます。
そこから具体的に企画を詰めていき、ゼミで発表しました。すると、目的が曖昧であるなどの指摘はあったものの、概ね支持されました。指導してくださった教授は、都内の幼児教室の先生や、日本一高齢化が進んでいると言われる群馬県南牧村およびその村と連携して活動を行っているゼミのOGの方を紹介してくださり、僕たちもゼミの内外で仲間を募って計画を進めていきました。
実際にプログラムを作っていく中では、参加者とスタッフ合わせて数十人を移動させるためにバスを手配したり、保護者の方々にお金を出していただくためにプログラムの特徴や魅力を考え、資料にまとめたり、暑さ対策などの安全確認のために何度も現地へ行って下見をしたりと、いろいろな苦労がありました。特に外国人の参加者を集めるのが難しかったので、途中からは日本に来ている留学生に的を絞って募集をかけていきました。
また、教育プログラムとして何ができるか、という点が重要だったので、幼児教室の先生にプログラム作成の方法論を教えていただきながら、仲間の中でアイデアを出し合いました。最終的には、子供たちの好奇心を喚起することを目標として、「自分の知らないことを誰かに教えてもらったら、教えてくれた人にシールをあげる。シールをいっぱい集めたら『なんもくマスター』になれる」というルールを考案しました。これにより、運営する学生は押しつけがましくなくいろいろなことを教えられるし、子供たちは自分が聞いたことをほかの子供に教えようとするので、交流も深まると考えました。また、班を作って班ごとにシールの色を変えることで、たくさんの色を集めるために違う班の人とも交流しよう、という仕組みを作りました。
うまくいったことも、思い通りにならなかったことも海外取材の糧に
当日は、まずは畑でジャガイモ掘りを行いました。農家の方とは事前に交流し、子供たちに農業の面白さを伝えようと思いを共有していたので、農家の方も積極的にいろいろな話をしてくださり、子供たちにとってとても良い経験になったと思います。さらに、外国人の参加者と一緒に作業をするので、体験中は、ジャガイモを見つけたら”I find it!”、お礼を言うときには”Thank
you!”と、英語でのコミュニケーションが自然と行われました。
次に、地元の小中学生たちと川遊びを行いました。都会の子供たちにとっては珍しい体験だったのか、みんな我を忘れて遊んでいました。地元の子供も最初は少し緊張していたものの徐々に仲良くなっていきました。最後は彼らと一緒に地元の料理を作る体験を行いました。子供たちにとっては、五感をフルに使った「旅」だったと思います。僕自身も帰りのバスではへとへとになり眠っていました。
大きなトラブルもなくプログラムを成功させることができたのですが、あれだけ考えていった教育プログラムについては、実際はほぼ機能しませんでした。その点では、ある意味「失敗」だったのかなと感じ、反省や後悔も少しありました。しかし、ゼミの教授からは高い評価を得ることができました。思い通りにいくことだけが成功ではない、という点で教育という分野の奥の深さを感じました。
教育に関するプログラムメイキングは帰国後最もやりたいことの一つなのですが、まだまだ知識も経験も足りません。海外での取材を通して、たくさんの成功例とその方法を見つけていこうと改めて決意を固められる良い機会になりました。
◆なんもくプロジェクト 当日のスケジュール
4:45起床 |
朝食・準備 |
前日入りしていた大学生と留学生が、子供の受け入れ準備を行う |
11:00着 11:30~12:30 12:45発 |
農作業 |
子供たち合流(7:40池袋発 09:52下仁田着)
|
12:55着 13:00~13:30 |
昼食 |
道の駅で昼食を食べる 食べている間に南牧村の小・中学生合流 |
14:00~15:00 15:15発 |
川遊び |
付近の河原で川遊びを楽しむ 大学生の料理班(3人)は郷土料理作りの下準備に向かう |
15:30着 15:45~17:45 |
郷土料理作り |
すいとん、こんにゃくステーキ、さしみこんにゃくの調理を体験し、みんなで食べる 記念撮影 |
18:00発 20:55着 |
バス移動 下仁田 →池袋 |
池袋駅で解散 |
※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/
前回の記事を読む
第1回 「飛び込め、躊躇なく」 世界一周を実現するチャンス
~FLY Program参加を決意したわけ
~価値ある1年をいかに自分で考えて創っていくか
第5回 なぜ幼児教育を取材テーマにしたか
第6回 休学経験者インタビュー:
世界40ヵ国以上、約300日間で回り、海外で働く人を取材し発信する旅
~生ぬるい自分を変え、同世代にいろいろな選択肢を示したい
第7回 世界一周のための準備
~幼児教育の専門家に会い、本を読み、取材項目をまとめた