世界へ”FLY”する東大生

~入学して即休学 世界の幼児教育を取材する旅へ

登阪亮哉くん(東京大学)

(2016年5月掲載)

第32回 子どもを共に育てるチームとして、学校と親が協力することの意味 ~マレーシアの事例紹介 その2

 

前回に続いて、マレーシアで教育プログラムEQL(Equity, Quality and Leadership in Education)の運営に携わっているNur Azizさんに聞きました。

 

阪)幼児教育において重要なことは何ですか。

 

Nur Azizさん)幼いころの教育において重要なのは、Teach(教える)ではなくInspire(やりたいと思わせる)です。そのために最も効果的な手段は、遊びです。遊びを通して、学びを楽しむ経験をたくさんすることで、成長した後も自ら積極的に学ぼうとするようになります。逆に、「必要だから学ぶ」という感覚を持たせてはいけません。

 

そして、それ故に幼児期の学びというのは教室の中だけで起きるものではありません。日々の遊びの中で学んでいくことができます。特に、長い時間を共に過ごす両親がそのような遊びを提供することはかなり効果的です。

 

阪)他に親がやるべきことを教えてください。

 

Nur Azizさん)自分の子どもがどんな人間になってほしいのかを思い描き、そこから逆算して色々な機会を与えてあげる。そのプランニングが大事だと思います。その際、世間の標準に過度に合わせようとしてはいけません。

 

また、学校を選ぶ際は、それが自分と子どもを含むコミュニティとなることを意識して、帰属意識が持てるようにすべきです。親と学校はともに子どもを育てるプロジェクトチームであると認識し、協力することが求められます。

 

登阪)Nurさんご自身は、子どものどのような能力を重視しますか。

 

Nur Azizさん)私は、社会に好影響を与えられるような子どもを育てたいと考えています。そのうえで個人的に重要だと感じるのは、Independence(独立していること)と、他者に共感する心を持っていることですね。特に後者については、他者に共感することができないと、社会への好影響を与えることができないと考え、とても重視しています。

 

そしてその他の能力についても、どれかが決定的に欠けていたらやはり社会を良くすることはできません。例えば仮に強いリーダーシップを持っていたとしても、問題解決力がなければ意味がありません。リソースを集める能力や、苦難を乗り越える精神力も不可欠です。

 

この中で、特に人間の本能の範囲外である問題解決力などを特に意識して教育で伸ばすべきだと考えます。

 

登阪)最後に、教育プログラムを作るうえで重要なことを教えてください。

 

Nur Azizさん)その教育プログラムのターゲットを、周囲の状況も含めてしっかり把握してください。そして、まずは小さな規模でやってみて、フィードバックを何度も繰り返しながら規模を大きくしていくことが重要です。いきなり大規模にやろうとするとうまくいきません。そして、規模を大きくする際は、見本となるような成功例を作って、周りを巻き込むと良いと思います。

 

 

インタビューの後半で特に印象深かったのは、親が子どもにしてあげられることについての話です。家庭で遊びを通した学びの機会を提供するのと並列して、学校というコミュニティに親子で参加することが大切とのことでした。これまでの取材でも、特に幼児教育については親と教育機関の関係がとても重要だと言われてきました。実際には困難な面もありますが、やはりNurさんがおっしゃったように、親と学校は子どもを共に育てるチームとして、互いに頼り切るのではなく協力していくべきだと思いました。

 

また、教育プロジェクトの作り方については、一般論だけでなく、僕自身が今考えている教育プログラムについての個別のアドバイスなども下さいました。そのプログラムについて、いずれご紹介できればと思います。

 

 

 

※東京大学初年次長期自主活動プログラム(FLY Program)
http://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/academics/zenki/fly/

前回の記事を読む

第31回 発展途上国の子どもたちに、実践を通した学びの機会を与えるEQLの試み  ~マレーシアの事例紹介 その1

 

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